おはようございます。

 

Shortmanです。

 

11日の大学院の講義やリアルタイム・セミナーへご参加頂いた皆様、ありがとうございました。

 

さて、10日金曜日の夜に2月の米雇用統計が公表されました。

 

米労働省が10日に発表した2月の米非農業部門雇用者数(季調済)は、前月比23.5万人増となり、市場予想の同20万人増よりも強い。また、前月は23.8万人増へ1.1万人上方修正された。

 

出所: Calculated Risk, February Employment Report: 235,000 Jobs, 4.7% 

 

同時に公表された2月の米失業率は4.7%に低下し、市場予想通り。

 


出所: Calculated Risk,

 

これで3月の利上げは確定しました。

 

しかし、失業率の長期チャートを見るとわかるけど、そろそろ不況入りな気がしますね。利上げが引き金になるのかどうか…後ほど考察します。

 

その辺の話は後半にするとして、またまた逆張り指標の武者さんが書いています。しかし、今回は面白いかも知れません。理由は彼が考えた理論ではなく、ハーバード大学のマーティン・フェルドシュタイン教授の「WSJ, 【寄稿】国境税調整の「欠陥」は幻影=フェルドシュタイン氏」説がベースだからです。

 

法人税を20%に下げて輸入品に20%の関税をかける政策ですね。国境税調整が導入されると、25%ほどドル高になってしまうけど、年間1,000億ドルの税収増になるので、減税に充当できるという。

 

悔しいかな、私はこの国境税調整の毎年1,000億ドルの増収分を、トランプ氏が向こう10年で1兆ドルのインフラ投資をする原資にできるな・・・と週報に書こうと考えていたら、逆張り指標の武者さんに書かれてしまった。だから予想が外れそうで嫌だけど、このハーバード大学のマーティン・フェルドシュタイン教授の説は十分に考える価値があると思うので、仕方がないけど武者さんの記事を掲載しておきます。

 

ロイター, コラム:トランプ帝国主義が招くドル高と中国衰退=武者陵司氏

 

それと、国境税調整が導入されるとドル高になると思われています。理由は、輸入業者は増税で業績が悪化し、輸出業者は輸出税が無税となるので業績好調となると思われますが、貿易収支の改善が見込まれるようになるので、ドル高が進行します。その結果、輸入業者はドル高で輸入コストが下がり収益悪化が改善し、輸出業者はドル高で収益改善が消えてしまい、両者の収益は再び以前のような状態に戻ると考えられています。

 

でもね、そんな簡単な話ではないと思いますよ。

 

国境税調整の導入が決まると貿易収支の改善を見越した裁定機会が生じて、国境税調整の増税分を相殺する方向でドル高が進行し、逆に輸出業者は収益の改善分を相殺する方向にドル高が進行することになります。ドル高は輸入額の低下を促し、税収は見込みより減る可能性があり、そもそもドル高・他国通貨安で他国の輸出競争力が増して、米国製品が外国で割高になって売れないという状況になるかも知れないし、さらには他国が米国製品に報復措置として関税を強化するかも知れない。

 

例えばだけど、自動車を例に考えよう。我々はドイツ車(ベンツやBMW)はもちろん、欧州車は比較的買うけど、アメ車はなかなか買わないよね。それは何故?正直、アメ車を買うくらいなら、日本の車の方が断然良い。逆に、欧州車は日本車より欠陥が多くて、値段も高いけど購入する。つまり、アメリカ政府はアメ車の質が悪いことを認識せずに、輸出促進策を導入しようとしている訳で、そんな状況でドル高・円安になれば、さらにアメ車なんか買わなくなると思うのは間違いだろうか・・・

 

2017年3月6日週の概況:

「重要なのは今週10日金曜日の米雇用統計。市場は既に3月利上げを織り込み済なので、今週は底堅く推移すると思われる。」と予想し、レンジも「112.50円~115.50円」と要したが、実際に市場は利上げを織り込んでいるし、底堅く推移しドル円のレンジは週初に北朝鮮のミサイル発射もあり、113.53円の安値をマークしたが、雇用統計前に高値となる115.50円をマークした。材料出尽くしと翌週にFOMCを控えていることもあり、雇用統計公表後は値を下げて114.80円で取引を終えた。

 

今週のレンジ:

113.50円~116.50円

 

2017年3月13日週の予想:

15日のFOMCで利上げが行われることを市場はほぼ100%織り込んでおり、次の関心は「年3回の利上げ」の回数が増えるのか増えないのかに移行している。回数が増える可能性が示唆された場合、ドル高へ向かい、116.50円程度まで上昇する可能性がある。逆に、利上げ回数の変更が無かった場合、ドル円は下落し113.50円くらいまで下落する可能性がある。また、債務上限の期日でもあるが、8月一杯くらいまでは資金は確保されそうなので問題は無いが、15日にはトランプ大統領の予算教書が公表される予定。この予算案の内容次第でも、ドル高に向かうのか、ドル安に向かうのかが占える。減税やインフラ投資の財源に国交調整税の導入が組み込まれた場合はドル高で、組み込まれなかった場合はドル安と予想しています。

 

定点観測:

ダウとドル円


ドル円と米2年債利回り

ドル・インデックスと米10年債利回り

VIX

金価格

原油価格


Shortman’s View:

来週の相場のヒントは「夢と現」ですね。夢から醒める時が来るのかどうか・・・楽しみです。

 

15日(水)のNY時間は非常に重要な1日になり、そこで公表されるFOMCの金利見通しとトランプ政権の予算教書の両方を判断しないといけない。一方で、債務上限問題は短期的な相場ではあるが、株式市場の続伸を妨げる要因になると考えられ、この3つの力関係で、むこう半年間位の相場の方向性が占えるかなと思っています。思っています。

 

まずは、FOMCから。利上げはほぼ確実で、市場の関心は利上げ回数です。2016年12月15日の為替レポートからFOMCの年末時点での金利見通し。

 

失業率もインフレもほとんど9月から予想は変わっていないという。

 


​ 出所: Advance release of table 1 of the Summary of Economic Projections to be released with the FOMC minutes

 

2017年は年3回が予想されていましたが、年間4回とかに引き上げられるかどうかに移ってますので、そこが重要になります。

 

利上げ回数が3回以上だと判明した場合、ドル高で116.50円程度まで上昇する可能性があります。逆に、年3回の見通しに関して変更が無い場合、材料出尽くしでドル安になって、113円台へ落ちていく可能性があります。

 

こいつの見通しが引き上げられるかどうかで、ドル円の方向性が決まりそうです。ただ、予算が議会との折衝を通じて本決まりになるのが10月だとするとその頃の不確実性は極めて高く、利上げをするタイミング的に3月、6月、9月までかなと思っています。

 

また、FOMCの理事はイエレン議長も含めて、2018年以降に大幅に入れ替えのタイミングなので、バランスシートの議論は今のメンバーでは議論せずに次の議長や理事達にバトンタッチして、淡々と利上げを3回行って、Good Byeって感じでしょう。

 

ということで、私は「利上げは3回」という予想を変えておらず、3月の後は6月が時間的に有効なタイミングで、(政府債務の上限引き上げが無いので難しいとは思うけど)秋まで米国の景気が良ければ9月も利上げするかも知れないと考えています。まぁ、それも相場が崩れなければという前提付きですが・・・。

 

次に、予算教書の公表に関して。①減税規模(法人税引下げ35%から20%への引下げなど)、②インフラ投資の具体的な規模と内容(10年で1兆ドル規模)、③財源としての国境税調整の導入があるかどうかに注目です。

 

公約で見ると、トランプ政権が向こう10年で約5兆ドルの減税(年間で5,000億ドルの税収減)となることです。インフラ投資に関してトランプ大統領は、インフラ投資を向こう10年間で1兆ドル(年間で1,000億ドル)実施すると公約で、財源がどこなのかが焦点になっています。さらに、国境調整税が導入されると計算上は向こう10年で約10兆ドル(年間1,000億ドル)の税収増となりますが、ドル高が多く進行する可能性が高まりますした。

 

毎年の政策効果だけを比較してみると、以下のような計算になります。

 

歳出(1,000億ドル+1,000億ドル)―歳入減(5,000億ドル=)―3,000億ドル

 

トータルでは毎年3,000億ドルの歳入減です。

 

これに減税とインフラ投資、規制緩和による景気拡大に伴う税収の増加見込み分が予算教書から判明すると、それを差し引いた金額が政府の税収の不足分(歳入減)になります。その金額が拡大すると私は予想しています。

 

 

最後に、政府債務の上限問題ですが、秋までには米国のデフォルトを避けるために、必ず上限の引き上げ認められると思うので、それまでの間に生じるかも知れない金融市場への影響を考察しておきます。

 

それは既に先週書いたことなので、ここでは簡単に記すにとどめます。

 

2017年3月9日の為替レポート:

***************

アメリカの債務上限問題(「財政の壁」)ですが、特別措置が講じられるので、実際に資金が枯渇するのは9月頃だそうです。少し時間的な猶予があるので、いきなり相場が荒れることはなさそうですね。

 

Bloomberg, 米連邦債務上限の適用停止の失効迫る、Tビル市場に波紋広がる

 

最終的には必ず議会は合意するとは思います。しかし、その合意を引き出すまでには、いろいろと問題が生じて、一部政府サービスが途中で受けれなくなって共和党やトランプ政権の支持率も低下するだろうし、議会との関係から政権運営に影響も出て、トランプ氏が掲げる公約の一部はインパクトの薄いものになるかも知れない。

 

しかし、債務上限がまた拡大されると、株価が上がるのは間違いなさそうで。FRBの利上げと株価上昇のイタチごっこで、円安・ドル高の可能性もあるかも知れない。これはまだ半年ほど先のトレンドなんですが、この米国の「財政の壁」の問題が解決するまでは円高で、解決したら(政府の債務拡大は景気の拡大だから)円安ではないかと考えています。

***************

さて、トランプ氏が大統領に当選した昨年11月の米国政府預金残高は4,000億ドルありましたが、3月初めには残高が1,750億ドルにまで下がってしまいました。単純計算で約2,250億ドルもの現金が、米政府から米国民へ支出されたことになります。その資金が入ってきたことで、株式市場がさらに値を伸ばした可能性があると私は思っています。政府からのお金が個人や法人に流れて、最後のトランプ相場を支えた可能性があるということです。

 

実際、年金や運用会社のお金は既に市場へオール・インな状態(逆言えば、手元キャッシュは過去最低水準で、リスク・イベントが起きたら危険な水準)で、最後のトランプ相場を支えてきたのは、夢(減税とインフラ投資で景気回復というシナリオ)を追い求めたプロではない投資家だったと考えています。相場を引き上げてくれる投資家が現れなくなれば、NY株式子市場のラリーは終わりです。

 

その資金も債務上限にヒットするので、そろそろ底を尽きます。3月15日までは政府の歳入と歳出は、歳出が超過していますが、15日以降は歳出と歳入がバランスしてしまい、超過分は無くなります。つまり、景気や株価を支える資金は政府からは出てこないことを意味しています。

 

例えば、あくまでもイメージですが、3月15日までは毎月歳入が100億ドルあったが、歳出が600億ドルあって、トータルで500億ドルの政府の歳出超過であったものが、3月15日以降は歳入と歳出がバランス、つまり、歳入分しか歳出が出来なくなり、景気と相場を支える政府資金の超過分はゼロ、つまり、毎月500億ドル政府から米国民へ流れていた資金が無くなることを意味しています。そうなると株式市場を支えていた資金は無くなります。

 

以上から、利上げに伴う金融引締め効果と、連邦債務の上限(財政の壁)により、政府予算が米国議会で承認され、債務上限の引き上げが認められるタイミングが9月だとすると、それまでの間をトランプ氏の夢(減税とインフラ投資)で株式市場を支えることは難しいと考えられます。

 

何故ならば、3月15日にトランプ政権の予算調書が公表されると、政策の具体的な内容が判明し投資家が夢から醒めてしまうからです(また、予算教書に記された政策は最大値であって、実際に実現できる政策は議会との折衝で妥協しないといけない部分も多くなり、予算教書で記された政策内容よりも必ずその規模は下回る思われます)。夢から醒めて現を見つめ直した瞬間には、相場を支えていた資金は無い。

 

トランプの夢(減税とインフラ投資)、経済成長を裏付ける利上げ、さらには景気を下支えしていた政府支出が止まってしまえば、トランプ相場のバブルは終わりを告げるかなと思います。

 

最後にレーガン政権時代の夢が現になった時のNY株価を2017年2月23日の為替レポートをに記しましたが、この場では再掲しておきます。

 

***************

トランプラリーがずいぶんと続くので、レーガン政権の時代の税制を調べてみました。難しい話は相場に関係ないので割愛して、NY株価と減税政策の時系列を株価のグラフにプロットしただけですが、なかなか面白いことが見えてきました。

 

レーガン政権時の1981年に経済再建税法(ERTA81)で減税が行われた。しかし、財政赤字の拡大に伴って、1982年に公平税制・財政責任法(TEFRA1982)が導入され、1984年にはと財政赤字削減法(DEFRA1984)が実施された。そして1986年には再び減税策として、税制改正法(TRA86)が施行された。株式市場はこの減税策を好感したが、その翌年の1987年10月に史上最大規模の世界的株価大暴落となるブラック・マンデーを迎える。

 

1985年12月3日に米議会下院に税制改正法(TRA86)が提出され、同年12月7日に下院を通過、1986年6月24日に上院を通過、同年9月18日に両院合同員会に提出され、同年9月25日に下院が承認し、同年9月27日に上院が承認した。両院の商品を経た翌月10月22日にレーガン大統領が署名をした。

 

1985年1月~1987年12月までのダウ平均


​出所:Shortmanが作成

 

この案が提出される前月にあたる1985年11月のダウ平均の終値は1,472.13ドルであったが、減税案となる税制改正法(TRA86)が下院を通過した12月の終値は1,646.67ドルへ74.54ドル(5.06%)上昇した。そこから下院を通過した6月の終値は1,892.72ドルで1985年11月の終値からは実に420.59ドル(28.6%)も上昇した。レーガン大統領が署名をした1986年10月の終値は1,877.71ドルとなり、法案提出の前月から405.58ドル(27.55%)上昇していた。その後もダウ平均は上昇を続け、ブラック・マンデーの2ヶ月前となる1987年8月に2,746.65ドルまで上昇し、実に1,274.52ドル(86.58%)も値上がりしていた。しかし、1987年10月19日にブラック・マンデーを迎え、2,164.16ドルの最高値をマークした後に、1,677.55ドルまで486.61ドル下落し、その下落率は22.48%にもなった。終値ベースで見ると法案提出前から521.4ドル(35.42%)の上昇であった。

 

この時のことを思い返すと、税制改正法(TRA86)への政策期待が大きく、実際の政策効果の正確な予測も行えないにもかかわらず、市場は楽観的な評価を行い、ダウ平均株価が一時86.58%も上昇してしまった。しかし、税制の効果などが行われ初めるようになると、政策効果への過度の期待が修正されていったと言えるかも知れない。

 

トランプ大統領が誕生して以降、具体的な減税政策の内容が未だに不透明にもかかわらず、NY株価は上昇し続け、史上最高値の更新が続いている。今のNY株式市場の状況が、レーガン政権の1986年の減税案・税制改正法(TRA86)と1987年のブラック・マンデーの関係になるのではないかと予想している。

***************

 

どう思うかは皆さん次第です。

 

今週もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

Good Duck!

Shortman

ブログランキング応援ぽち:

Shortmanのブログランキング1位獲得を目指して応援ポチをお願いいたします。

注意:

投資は自己責任です。読者の投資判断の最終決定に、我々は一切関与しません。この情報を用いて読者の方が損失を被っても、我々は一切の責任を負いません。我々はNY市場が世界の金融市場の未来を決めていると考え、NY市場を中心に分析しております。我々が用いるデータ、チャート、ニュースは、誰でもインターネットで無料で用いることができるものだけを利用して、できるだけ正確に理解し、できるだけ簡潔に、かつ、わかりやすく皆様に伝えられるように心がけております。また、個別株の分析は行いません。先物(株価指数・為替・商品・一部オプション)のトレードに必要な情報のみ提供しています。