おはようございます。
Shortmanです。
先週末のセミナーと大学院では今後のストーリー(展開・注意点)について真面目に話をさせて頂きましたので、ぜひ動画を見て欲しいと思います。また、大学院の方では、初めて実践的な取引の方法をお話させて頂きました。この機会に為替の日報を読んで、将来の予測を立て、勘ピュータを活用して、上手に稼いで欲しいと思います。
大学院生のコメントを一部ご紹介。
『講義、お疲れ様でした!
いや〜、イタイ事だらけでずっとお叱りを受けてるようで…冷や汗、アブラ汗ダラダラです。
全く出来ていませんね…
何のために一年、勉強してきたのか。 今になってつながって来ました。 遅いですけど』
遅いことは決してなくて、何かに気が付いて頂ければ、それだけでも講義を受けた価値があったと思います。そして、気が付いたところからがスタートです。ぜひ、今後は取引をする際に、講義でお話をした手間を省かないようにしてみてください。
『ありがとうございました。
ほんとに、学べば学ぶほどいかに自分がバカな、とんでもなく恐ろしい事してたのか、痛感してます。今の玉を無くしたら、今度からは絶対、エントリー前にじっくりストーリーを考えて、慎重にやります!
早く、録画をもらって復習したいです。 記憶が』
ストーリーを考えずにポジションを持つのは、日本の自動車免許は持っているけど、初めてドイツのアウトバーンを時速200キロ出して運転するようなものです。パソコンの前に座ったらまずはストーリーを確認しましょう。ストーリーを考えて時間が過ぎてしまっても、相場は無くなりませんので、できるだけ正確にストーリーを考えましょう。。
また、ストーリーを考える際に、景気や貿易(マクロ経済動向)、金利動向、FRBの金融政策動向、国際政治情勢をできるだけ客観的に書き出し、それぞれについて、何が円高(ドル安)要因か、何が円安(ドル高)要因かを表にして、点数をつけるとわかり易いかも知れません。例えば、円高要因はマイナス1点、円安要因はプラス1点、中立はゼロ点として、その合計で円高か円安かを判断するのも有効です。仮に円高要因が5つ、円安要因が2つ、中立が2つならば、-5+2+0=-3だから、今後は円高方向に動く可能性が高いと判断できるみたいな感じです。。
さて、セミナーや大学院で話したように、相場の行方を左右するのは、米税制改革法案次第ってところになっております。
しかしながら、上院と下院での相違点が目立ち、成立に不透明感が漂っております。
ロイター, 米上院の税制改革法案、法人減税を1年先送り 下院案と相違
個人的には税制改革なんてレベルではなくて、単なる減税の話ですが、基本的な柱は大きく分けて2つであったと思います。
①法人税減税(現行35%を20%へ引下)
②所得税減税(現行最高税率38.5%を35%へ引下)
この2点のうち、既に後者の所得税減税は、最高税率が39.6%から38.5%への引下げとわずか0.9%の引下げに留まり、税区分の差はあるものの、実質骨抜きにされています。したがって、堅調なNY株式市場を支えてきたのは、前者の法人税減税だと考えられます。上院下院共に税率の引下げ幅は35%から20%で同じですが、時期に大きな相違があります。
上院 ➡ 2019年以降
下院 ➡ 即時
ロイターの記事にはこう記してあります。
『下院では同日、歳入委員会で税制改革法案が承認された。本会議では来週、採決が行われる見通し。一方、上院財政委員会が公表した案はまだ正式な法案の形になっておらず、今後の日程は明らかではない。共和党は両院で過半数を握るが、上院での野党との議席数の差は小さく、通過へのハードルが高い。』
もちろんその他の減税策に関しても、上院と下院では相違が多いので、両院の溝を埋めるには相当な時間を要しそうです。11月の中間選挙前にクリアしたいとなると、やはり骨抜きな政策にならざるを得ないと考えています。
トレードのヒントとしては、法人税率の引下が2019年以降となると、トランプ政権の実績はほとんど何も無く、必然的に失望でドル売りを招き、さらにNY株価が下落することになれば、ドル下落は加速します。一方で、仮に法人税率の引下が即時となれば。NY株価は堅調推移を維持しそうですが、為替市場は米国の財政赤字拡大を懸念して、積極的なリスクオンにはならず、ドル売りになるかも知れません。ドルが堅調に推移するためには、2018年度予算からこの法人税の引下を実施する以外にはなさそうです。
2017年11月6日週の概況:
先週は11月3日(金)の流れを引き継ぎ、米税制改革実現への期待からドル円は6日(月)に114.72円まで上昇する場面も見られたが、114円台半ばの売りが厚く、さらにはアジアを歴訪中のトランプ大統領が日本を含む対米黒字国に対して、貿易不均衡是正を求める発言をしたこともあり、113円台へすぐに下落した。日経平均株価は週後半に向けて23,000円台を超えて堅調推移し、投機筋による先物の円売りも非常に高い水準にまで増えていたが、上米上院共和党が法人税減税の実施時期を1年延期する案を検討していることが報じられ、ドル円は上値の重い展開となった。
参考:
IMMポジション
※これだけ円売りの枚数が増えているにもかかわらず、114円台までしか円安が進行しない。2015年では124円台にまで円安が進行していたにもかかわらず…そして、円高に向い始めると、この円売りのショート・カバーが入って、円高が加速したりするので、ちょいと期待しております。
今週の予想レンジ:
110.50円~104.50円
2017年11月13日週の予想:
12月のFOMCでの追加利上げを市場は既に織り込み済で、ドル高方向への要因はNY株高と米減税案だけの状況になっています。しかし、頼みの綱のNY株高も基本的にはFRBの債券再投資による量的緩和の恩恵を受けていた上で、大幅な法人税引下を期待しての上昇であることから、FRBによるバランスシートの縮小が10月から行われ始め、さらには減税策の実施に不透明感が漂う現状では、ドルの上昇が止まる可能性に注意したい。12月は多くの米企業の決算月になり、年末に向けたドル需要が増すことがドル円相場を支えるであろうが、115円を超えるドル円の上昇は難しいと思います。
定点観測:
ダウとドル円
※参考:
ちょっと気になるチャート。バブル最高値の日経平均株価のチャートを思い出してみる・・・この時は私は大学1年生。
直近のダウ平均
直近の日経平均株価
1989年の日経平均株価
最高値をマークした後の1990年の日経平均株価
相場は頭で考えて勝てるものでもないです。時には感覚を研ぎ澄まさないといけない時もあるとかないとか…噂か!
ドル円と米2年債券利回り
ドル・インデックスと米10年債利回り
VIX
金価格
原油価格
Shortman’s View:
既にトランプ政権の税制改革という掛け声は、主として法人税の引下という減税策に変ってしまっています。この件に関して、参考になるコラムが出ています。
ロイター, 米減税は迫力不足、来春ドル110円割れも=門田真一郎氏
『税制改正が経済・市場に与える影響は、減税(需要刺激)か税制改革(供給拡大)かによって大きく異なる。減税は可処分所得の増加による個人消費の活性化や資本コストの引き下げによる設備投資の喚起を通じて成長率を短期的に押し上げる。』
短期的に押し上げる・・・
減税策が短期的には効果はあるものの、長期的にはその効果は持続せず、物価だけが上昇してしまうということは、経済学では基本中の基本です。マクロ経済学の101で、経済学部の1年生は必ず学びます。
そのマクロ経済学の101であるインフレ率を考慮した総需要・総供給曲線分析を思い出しましょう(大学院生はテキストの「マクロ経済学 1-4 総需要曲線と総供給曲線」を参照。その他の毒者の方々は、マクロ経済学の本でも購入して各自読みましょう。)。
私は以前からインフレは財政的な要因であり、金融政策単体ではインフレにはなかなかならないとレポートで書いてきました(金融政策でインフレ率が上昇するのは、財政ファイナンス的な要素と結びつくことで生じると考えています)。この図を見れば明らかですね。
この減税などの拡張的な財政政策は、短期的には景気を副作用として期待インフレ率を上昇させ実際のインフレ率を上昇させると考えられています。
各国の中央銀行がインフレ率の上昇を促そうとして量的緩和を行っても上昇しなかったインフレ率が、上向く可能性が出てきます。問題はその時に中央銀行が上昇するインフレ率をコントロールできるかどうかです。
インフレ率の上昇を抑えるためにFRBは利上げを実施しなければならなくなり、景気にはマイナスのインパクトを及ぼすことになります。その場合、短期的な景気の回復の後に、景気の後退を招く可能性が高まりますので、ドル円が110円を割るどころか、来年は100円だって割るかも知れません。
亀のみぞ知る
Good Duck!
Shortman