おはようございます。
Shortmanです。
量的緩和にマイナス金利・・・全く効果ないですね。
すみません、本日出張で新幹線で移動しておりまして。相変わらずバタバタです(^_^;)
前週1月31日週の概況:
先週の予想は119円~123円でした。理由は日銀のマイナス金利導入を受けて、少し円安モードかなと思ったからですが、黒田バズーカ線香花火の賞味期限があまりにも短く、あっという間にマイナス金利導入前よりも円高に戻されてしまいました。先週前半は日銀によるマイナス金利導入で121 円台で推移したものの、米国のISM製造業景況感指数が3 ヶ月連続となる50 割れを記録したり、ISM非製造業景況感指数も2年ぶりの低水準を記録するなど、米国内でも景気の鈍化が嫌気されて、ドル売りの流れが強まった。また、NY連銀ダドりー総裁が昨年12 月に行われたFRBによる利上げ以降、金融状況のひっ迫を考慮する必要があるといった発言を受けて、利上げ期待が後退して、さらに円高が加速した。週末5日に発表された1月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想前月比19万人増よりも弱く、同15.1万人増にとどまったが、失業率が4.9%と市場予想5.0%よりも強かったことに加えて、平均時給が伸びたことからドルは買い戻されて、ドル円は117円台を回復したものの、再びNY株式市場や原油価格の下落がドル売り材料となり、116.85円で取引を終えた。
今週2月7日週の予想レンジ:
114 円~119円
以前から指摘しているように、日本の金融政策が世界経済へ及ぼす影響はほとんどない。今回の日銀によるマイナス金利導入は2 月16 日に適用開始となるが、一定の円高への歯止めにはなるかも知れないが、基本は不発。選手末の5月の米雇用統計から3月利上げの期待を後退させたくない投機筋もいるが、現状でのドル高は「株安」・「原油安」をもたらすので、利上げはないと思っており、基本的にドル円は下落する方向と思われる。 既に通貨戦争の火蓋は切って落とされている。2 月10 日、11 日にイエレンFRB議長が議会証言を行う予定なので、「米国経済を最優先に考えて行動する」と考えると、彼女の発言には注意が必要。
Shortman’s View:
時間がないので、だいぶ乱暴な書き方ですが、目で見ることで直感的には理解できると思います。
大事なことなので、目でみながら日本の財政が抱える「今そこにある危機」を感じて下さい。
量的緩和やマイナス金利、膨らむ財政赤字の問題を簡単に理解するには、バランスシートを絵に書いて学ぶことが非常に大事なので、私のレポートを読むにあたっての基礎と思われる知識として、勉強してください。そして、財政赤字の問題が話題になった時は、自分の手でこれらのバランスシートを書いて、理解を深めてください。
金融政策の主要な論点を理解する為に、政府、中央銀行、民間の3主体しか存在しない非常に単純化された社会を考えます。
そして、政府の資産は国債の累積赤字額に等しく、その累積赤字額が国債の発行残高としておきます。政府の資産は、国民が貨幣と国債を通じて、政府に提供している富に等しく、それは国民にとっては負債(負担)となります。貨幣は現金と預金を合わせたものとします。
この図からわかることは(非常に直感的ですが)、政府という人格は存在するけれども、政府という人間は存在しないので、政府の借金(国債)は、そのまま国民の借金であることがわかります。
さて、日本銀行が国債を民間から(金融機関を通じて)国債を買い増しします。
すると、どうなるでしょうか?
日銀のBSでは資産の国債I(青色部分)が増加して、負債側で貨幣(赤色部分)が増加し民間の資産の国債II(青色部分)が減少して、貨幣(赤色部分)が増加します。
全体の国債発行残高(青色)は変化はなく、中央銀行と民間の間で国債と貨幣の保有量が変わることになります。
また、貨幣の供給が増えることで(決済手段としての貨幣需要が満たされる水準まで)金利が低下します。
さて次に、金利がゼロがゼロになるまで日銀が国債を購入するオペレーションを実施したとします。
では、ゼロ金利の状況からさらに日銀が国債を購入し続けたらどうなるでしょうか?
決済手段としての貨幣の需要は金利がゼロになった時点で十分に満たされており(貨幣と国債は完全代替となり、いわゆる「流動性の罠」な状況)、これ以上金利は下がらないから金融政策の効果はない。また、物価も上がらないから、デフレから脱却できない。つまり、ゼロ金利下での日銀による量的緩和という国債買入をし続けたからと言って、金融緩和の効果はないということがわかります。
さて、ここからが重要です。
では、ゼロ金利下で金融緩和効果が存在しないにもかかわらず、さらに日銀が国債を買い続ける理由は何があるであろうか?
実はここが非常に問題を孕んでいるとこですので、よく考えてみましょう。
先程までの議論は、市中(民間)に流通している国債を、日銀が金融政策のオペレーションの一つとして、購入するということでしたが、今回は違う視点です。仮にですが、政府が自らの失策で毎回生み出している財政赤字を遣うために、政府が新たに発行する国債を民間に購入させる目的で、政府が日銀に圧力を掛けて、日銀が民間から国債を購入しているとしたらそれは金融政策でしょうか?
仮にそうならこれは金融政策ではないという話です。
メディアなどで、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」という言葉を目にする機会が最近増えていると思いますが、これは国債費関連を除いた政府会計上の国の歳入と歳出の差額を見るべき尺度です。
(※2015年2月12日、内閣府は政府の経済財政諮問会議に対して、「中長期の経済財政に関する試算」を提出。その中で、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、名目経済成長率3%・消費税率10%では黒字化は困難と試算している。)
プライマリーバランスが赤字なのは、税収が無いにもかかわらず、政府が無駄に金を遣うからに他ならず、そのため私は政府の赤字を「政府の失策」と飾り言葉を付けて表現しております。
この政府の失策による赤字を埋める目的で、日銀が政府を助けているとしたら・・・
それを考えてみることにしましょう。
先程までの議論でゼロ金利下では、日銀がいくら国債を購入しても金利は低下しないことはわかっています。金融緩和の効果はないにもかかわらず、「日銀に国債を買え」「マネーを刷れ」と主張する偉い方々の本当の目的は別にあると言えます。
何がしたいのであろうか?
図の黄色の部分がそうですが、新たな財源を政府が確保する為に、新規に国債を発行して民間に購入させる目的で、政府が日銀に対して民間から国債を購入させているとしたら、これは明らかに先程までの金融政策(量的緩和)の話とは違ってきます。
こちらは財政政策の議論になってしまいます。
新たな図を見れば一目瞭然ですが、新規に発行した国債分はそのまま国民の負担になります。
日銀が市中(民間)から国債を購入している裏側で、政府がさらに国債発行残高を増やす行為は、確かに財政法5条の日銀が政府からの国債の直接購入を禁じる(市中消化の原則)を満たしてはいますが、本当に大丈夫なのでしょうかあ?
ここでちょっと法的な話題に。
財政法第五条
「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」
一般に「国債の市中消化の原則」と呼ばれるもので、国債の日銀による直接引き受けを禁止している条文です。
日銀に解説されているので読んで見てください。
日本銀行, 日本銀行が国債の引受けを行わないのはなぜですか?
『これは、中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからです。そうなると、その国の通貨や経済運営そのものに対する国内外からの信頼も失われてしまいます。これは長い歴史から得られた貴重な経験であり、わが国だけでなく先進各国で中央銀行による国債引受けが制度的に禁止されているのもこのためです。』
財政節度を失わせ、悪性のインフレーション・・・・実際日本には苦い経験があります。
1931年に4度目の大蔵大臣に就任した高橋是清蔵相が、軍事予算の増額を日銀引受により賄った経緯があります。そうしたおかげで、日本経済を世界恐慌のデフレから世界で一番最初に脱出させることには成功しました。これを今の言葉で言えばリフレーション政策だが、実はこのリフレ政策によりハイパーインフレの兆候が散見され始めることになりました。その為高橋は軍事予算の縮小(出口戦略)を図ったところ、軍部の恨みを買って、二・二六事件において暗殺されてしまいます。高橋是清が死んだ後も、軍部の暴走と軍事予算の拡大に歯止めがかからず、戦争拡大・敗戦・戦後のハイパー・インフレーションへと突き進んでいくことになりました。
また昨今デフレ解消に日銀を利用しようと企て、国債の日銀引受を主張する方がおられますが、デフレ解消が「特別の事由」に該当するのかは甚だ怪しいモンダミン。
再度日銀の解説を読み直しましょう。
日本銀行, 日本銀行が国債の引受けを行わないのはなぜですか?
「特別の事由」に該当するケースは、『日本銀行では、金融調節の結果として保有している国債のうち、償還期限が到来したものについては、財政法第5条ただし書きの規定に基づいて、国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借換えに応じています。こうした国による借換えのための国債の引受けは、予め年度ごとに政策委員会の決定を経て行っています。』と説明しているようなことで、公債の借換え等は、日銀が現に保有しているものの引受けであり、無責任な通貨膨張の要因には成り得ず、日銀が直接引受けした方がむしろ都合が良いと考えられています。このような場合が「特別の事由」に該当すると考えられるので、デフレの解消は日銀が便利かどうか誰にもわかりませんよ。
さて、実際はまだ国債の日銀による直接引受はされていないけれども、実質的には政府の赤字の拡大に日銀が協力しているの同じなのかも知れないと思います。
一応、政府の答弁では財政法第5条には抵触しないと。
ロイター, 日銀の国債買入、財政法第5条に抵触しない=政府答弁書
『現在の日銀の国債買い入れは、2%の物価安定目標の実現という金融政策を目的に「日本銀行が自らの判断で、市場で流通しているものを対象に実施しているもの」であり、財政法には抵触しないとの見解を示している。』
しかし、本当にそうでしょうか?
実質的には日銀引受と同じだとしたらどうでしょうか?
現に日銀の黒田総裁は元財務官僚である。日銀は日本政府が株式の55%を融資、政府が様々な監督権限を有しており、日銀人事は国会の同意が必要であることを考慮すると、日銀は実質的に政府の子会社です。
この状況で、「日本銀行が自らの判断で、市場で流通しているものを対象に実施しているもの」と言い切れるのであろうか?
個人的には甚だ疑問だな~。
仮にエリート財務官僚や中央銀行家に貨幣の供給(日銀による民間からの国債購入)が巧みにコントロールあれているとしても、本来の日銀の存在意義というか、スタイルというか適切な言葉が思い浮かばないですが、「日々の金融調節を通じて、金利に影響を与えて金融政策を行う」という日本銀行の意志に反して、国債を購入する貨幣供給の拡大が行われているのならば、それは財政赤字の無制限な膨張を生み出し、将来的に高インフレに陥るリスクの高くなる日銀の国債直接引受と実質的に同じ行為ではいであろうか。
この私の危惧を図にしてみるとこんな感じになります。
日銀がガンガン国債を購入し続ける裏側で、政府がガンガン国債を発行し続ける。
どこからどうみても日銀は政府の財政赤字拡大(黄色部分)に貢献しており、明確に国民の負担は増加しています。
怖いですね。
ここまでの議論を理解した上で、次の話題に(これで最後です)。
さて、ここで、またまたとんでもないことを主張する元大蔵官僚がいます。
この方はゴルフ場で置き引きして逮捕されちゃった過去もあるので、学者は誰も相手にしませんが、その肩書きを利用して、面白いことを主張します。
現代ビジネス、ニュースの深層 「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか…なんと2016年、財政再建は実質完了してしまう!
え~っ、ウソでしょう?
と思いませんか?
ある意味で正しくて、ある意味で正しくない。
なんとも説明が難しいですが、私の最終結論は「この方の議論は詭弁」。
だから元財務官僚でありながらまともな大学で教鞭も取れないんです。
簡単に説明しておきます。
彼はいきなり、「借金1000兆円。これは二つの観点から間違っている。」と言ってますが、政府と日銀を統合しても国民の借金は消えません。
確かに彼の最初の主張は正しいと思います。
『その2013年度末の国のバランスシートを見ると、資産は総計653兆円。そのうち、現預金19兆円、有価証券129兆円、貸付金138兆円、出資66兆円、計352兆円が比較的換金可能な金融資産である。そのほかに、有形固定資産178兆円、運用寄託金105兆円、その他18兆円。
負債は1143兆円。その内訳は、公債856兆円、政府短期証券102兆円、借入金28兆円、これらがいわゆる国の借金で計976兆円。運用寄託金の見合い負債である公的年金預り金112兆円、その他45兆円。ネット国債(負債の総額から資産を引いた額。つまり、1143兆円-653兆円)は490兆円を占める。
先進国と比較して、日本政府のバランスシートの特徴を言えば、政府資産が巨額なことだ。政府資産額としては世界一である。政府資産の中身についても、比較的換金可能な金融資産の割合がきわめて大きいのが特徴的だ。
なお、貸付金や出資金の明細は、国の財務書類に詳しく記されているが、そこが各省の天下り先になっている。実は、財務省所管の貸付先は他省庁に比べて突出して多い。このため、財務省は各省庁の所管法人にも天下れるので、天下りの範囲は他省庁より広い。要するに、「カネを付けるから天下りもよろしく」ということだ。』
そうですね。売れるものがたくさんあります。
しかし、次の理由は明らかに詭弁に過ぎない。
『政府と日銀の連結バランスシートを見ると、資産側は変化なし、負債側は国債減、日銀券(当座預金を含む)増となる。つまり、量的緩和は、政府と日銀を統合政府で見たとき、負債構成の変化であり、有利子の国債から無利子の日銀券への転換ということだ。』
それを確認する為に、先程出てきた図で説明します。
ゼロ金利下でさらに日銀が国債を購入する状況です。
日銀は政府の子会社ですから、政府と日銀の統合バランスシートを見てみましょう。
確かに、国債Iが消えて(その分貨幣が増えて)、国債は民間に残っていた国債IIになります。
「うわ、この人って頭が良い!」「さすが元大蔵官僚!」
なんて思った時点で、あなたは愚かなる民です。
詭弁です。
そんな魔法は存在しません。
しかも、日銀が政府の子会社だと言っても、日銀単体のバランスシートを出そうとすると、どうなるでしょうか?
あれ、消えたはずの国債Iが出てきてしまいますね。
でも、彼の議論では統合すれば日銀保有分の国債残高は政府側の負債と相殺されると言いますが、それは帳簿上の見た目だけで、実際には消えません。
では、彼の主張通り消えたとするとどうなるでしょうか?
日銀の資産であった国債がないのだから、貨幣もなくなります(預金封鎖・資産課税的な状況に陥ります)。
そして、日本銀行は要らなくなってしまいましたね。
これは別アプローチですが、統合バランスシートで見て、なぜ財政法5条で国債の日銀引受を禁じているかがわかってきますね。
この結果、日本はこんなバランスシートになります。

これでようやく民間の債務も減って、めでたしめでたし。
しかし、この状況になる前に、戦後に行われた新円切替・預金封鎖・資産課税・ハイパーインフレーション(600倍)という状況を経て、日本の税金問題にカタがつくわけです。
最初に書きましたよね。
『(非常に直感的ですが)、政府という人格は存在するけれども、政府という人間は存在しないので、政府の借金(国債)は、そのまま国民の借金であることがわかります。』
日本政府の借金は国民の借金です。
おまけですが、最後に、ここに注意して欲しいです。
日銀がガンガン国債を購入し続ける裏側で、政府がガンガン国債を発行し続ける状況も再度見ておきましょう。。
政府と日銀の統合バランスシートでは。
既存の国債も新発債も少なくなっていますね。
だからこんな主張も彼は言えるのかな。
『直近の政府のバランスシートがわからないので、正確にはいえないが、あえて概数でいえば、日銀も含めた連結ベースのネット国債は150~200兆円程度であろう。そのまま行くと、近い将来には、ネット国債はゼロに近くなるだろう。それに加えて、市中の国債は少なく、資産の裏付けのあるものばかりになるので、ある意味で財政再建が完了したともいえるのだ。』
統合バランスシートで見て帳簿上は消えているだけで、日銀の中央銀行としての役割が残っている限り、実際に国債の残高が変わることはありえません。また、統合バランスシートでみても一目瞭然ですが、国民の負担は変わらないどころか、増えています。国民の負債(負担)はそのまま国債の発行残高ですので、こんな詭弁に騙されると、国民の負担は減るどころか、ますます増えているという現実を見失ってしまいますよ。
詭弁に騙されてはいけません。
為替だけでなく、自分や子供、孫達の未来のためにも、「今そこにある危機」について、正しい理解を深めておきたいですね。
今週もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
Good Duck!
Shortman