おはようございます。
Shortmanです。
早いもので一般向けにレポートが配信されて1年が経過しました。
金融と下ネタネギ、失礼、下仁田葱をこよなく愛する『エロノミスト・Shortman』の無責任なレポートがここまで中毒患者を増やすとは思いませんでした。
金曜日と日曜日に注目していたイベント。
Bloomberg, 止まらぬドル高相場、あすの雇用統計待たず115円突破も-市場関係者
事前にこんな記事も出ていて、ギョギョギョ!とさかなクンでしたが、
そんな展開にはならず、下値は限定的ながらも売りが出てホット一安心。
Bloomberg, ドルは114円前後、米雇用統計や伊国民投票を前に売り-下値は限定的
そして11月の米雇用統計が公表された。
ロイター, 米雇用者数、11月は17.8万人増 失業率は約9年ぶり低水準
『米労働省が発表した11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が17万8000人増と、市場予想の17万5000人増を上回る伸びとなった。失業率も4.6%と、2007年8月以来約9年ぶりの水準に改善し、米連邦準備理事会(FRB)が12月に利上げに踏み切る下地がほぼ整った可能性がある。』
悪くない。利上げを後押しする内容。しかし、材料出尽くし。
先週末は113円台にまで下落してくれました。
Bloomberg, NY外為(2日):ドル軟調、113円台半ば-雇用統計まだら模様
良かった、良かった。
雇用統計はどんな結果が出ても、今月12月の利上げを大きく妨げることはないと予想していたので、まぁ、こんなもんかなと。
雇用統計以上に注目していたのは、オーストリアの大統領選挙とイタリアの国民投票。
オーストリアはさすがに極右政党出身の国家元首誕生とはいきませんでした。
ロイター, オーストリア大統領選、親EU派が勝利 極右候補敗れる
親EU派のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏が勝利したようですが、極右政党の支持者も40%以上いることがわかりましたので、こちらも米国と同様に国を二分した戦い。どちらが勝利しても波乱含みな将来かなと思いますよ。
そして、市場が最も注目しているのは、憲法改正を問うイタリアの国民投票。正直、イタリアは昨年F1のイタリアGPを身に行きましたが、正直全く関心がない国なので、五つ星運動が拡大しようが、国民投票で憲法改正が否決されようが、「そんなの関係ねぇ~」という感情しかなく、その結果がどの程度金融市場に影響を及ぼすのかを現時点で判断することは難しいと考えています。
英国のEU離脱の際もですが、政治的なプロセスは交渉が伴いますので、その場ですぐに影響ができるのかどうかを見極めるのは難しく、イタリアも同様かなと思っています。
今のところニュースを見る限り、憲法改正は否決されるようですね。
ロイター, イタリア国民投票、憲法改正案を否決へ=第1回開票予測
これが否決されるとイタリアの首相は辞任するのだとか…
本当に勝てると思っていたのかな…
まぁ、こちらもこんな感じで大方市場は敗北を予想していたので、こちらも材料出尽くし。
先週11月28日週の概況:
先週は『根拠なき熱狂による相場だとしたら、感謝祭までで続いた上げ相場が材料で尽くしで急落する可能性もあるので、112円を挟んで前後2円ですが、やや円高にバイアスを置きました。』と予想して、ドル円の予想レンジを、109.00円~114.00円と想定していました。週初はOPECでの減産合意が難しいとの観測から一時111.32円まで売られたが、30日はOPECの減産合意となり114.83円近くまで上昇してしまいました。ただ、米地区連銀経済報告(ベージュブック)ドル高が製造業にとって向かい風になっているとの報告もあり、ドル買いのペースはやや和らいだ。その後、2日に公表された11月の米雇用統計は予想を上回ったものの、市場は既に12月の利上げを織り込み済で、ドル円はやや値を下げて113円台で取引を終えた。もっともトランプ次期大統領が財務長官に元GSのムニューチン氏を起用するとの報道を受けて、ドルは底堅く推移している。
今週のレンジ:
110.00円~115.00
今週12月5日週の予想:
翌週13日・14日にFOMCを控えて基本的には動意が少ないと考えている。既に市場はFRBの利上げを織り込み済であり、リスク回避の円買いポジションの解消や、日米金利差をベースとしたドル買いも一服し、トランプ氏の大統領就任式が年明け1月20日までは大きな動きも無いかなと想定している。不確実な要因としては欧州の政治的なイベントだが、こちらも市場がすぐに反応すべき急ぐプロセスは無いと思われるので、110円前後では底堅く推移するのではないかなと想定している。
定点観測:
ダウとドル円
1) 52週高値更新銘柄と52週安値更新銘柄の数が共にその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2.8%以上ある → YES
2) NY証券取引所のインデックスの値が50営業日前を上回っている → YES
3) 短期的な騰勢を示すマクラレンオシレーターの値がマイナスに転換する → YES
4) 52週高値更新銘柄数が、52週安値更新銘柄数の2倍を超えない → NO
ちょいと残念・・・
ドル円と米2年債利回り
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ドル・インデックスと米2年債価格
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VIX
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金価格
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原油価格
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Shortman’s View:
先週末に公表された11月の米雇用統計に何のサプライズもないが、ちょいと気になる数字が目に付いた。。
『-グラスドアのアンドリュー・チェンバレン氏 今日の力強い統計は、雇用の増加が7年5カ月続いたことを示した。この期間は統計開始以来の最長だ。FRBが12月の会合で25ベーシスポイント(bp)利上げするのを後押しする可能性が高い。』
う~ん、雇用は7年5か月もの長い期間増加してきたのか。
ちょっと米国の国勢調査の臨時雇用を除いた雇用の増減を見てみよう。
出所: Calculated Risk, November Employment Report: 178,000 Jobs, 4.6% Unemployment Rate
民間部門だけでも7年近く増加し続けていることが確認できる。
その一方で、NY株価は労働生産性と乖離しながら上昇を続けてきた。
出所: Zero Hedge, US Productivity Plunges For 3rd Quarter In A Row – Longest Losing Streak Since 1979
リーマンショック以降、雇用は拡大し、労働生産性も上昇し続けてきたが、ここのところ頭打ちだし、株価との乖離が尋常ではない。
一方で、米国の債務の拡大には歯止めが効かない。
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出所: Treasury DirectよりShortmanが作成
思い出して欲しい私が2月29日に書いたレポートを。
日本国の債務の拡大は、日本国民の貯蓄が増えるという図式。米国も同様だ・・・。
バーナンキ前FRB議長が金融危機を救ったことは認めるが、それは問題の先送りに過ぎなかった。そして、物価の安定と雇用の拡大という2つの政策目標を達成するために、FRBとアメリカ合衆国政府は、足並みをそろえて連邦債務を拡大させたということだ。
いつも書くけれども、経済は常にトレードオフの関係。
何かを得れば、何かを失う。
私にはわからない。
金融危機を回避し、物価を安定させ、雇用を拡大することが、連邦債務を天文学的に増やすことよりも優先されるべきことなのかどうか。
1,000兆円の債務で破綻させておけば、2,000兆円の債務よりも被害が少ないはずだし、価格メカニズムは完璧ではないが、非常に優れた一面を兼ね備えていて、安ければすぐに買い手が見つかることだ。
2,000兆円以上にまで膨らんだ連邦債務の下で、トランプ氏がさらに財政拡大を行うという。完全雇用の状態で、さらに景気を拡大させるという。問題は偏った富の配分であるにもかかわらず、そこにはメスを入れずに、財政を拡大させても富の不均衡は拡大するだけであろう。
貧乏には貧乏人のままだし、恐らくはインフレが加速し、下手をすればコントロールできないほど債券が売られるかも知れない。そして、金利上昇に歯止めがかからず、想定元本7京円以上のデリバティブズ市場を通じて、金融メルトダウンが生じるかも知れない。
世界は間違いなく袋小路に追い込まれている。
何年先なのかは誰にもわからないが、間違いなくトランプ氏が公約通り政策を行うと、経済・金融のメルトダウンのスイッチが入る。
永遠に成長し続けるなんて幻想だが、永遠に責任の所在が明確でない国家債務が拡大し続けることは間違いない。風船は永遠には膨らまない。戦争が起きてリセットされるか、世界恐慌が起きてリセットされるか、何かはわからないが、何にせよ、経済成長と債務の乖離は、強制的に清算されないといけない。今の我々が行っているすべての金融政策と経済政策は、強制的な清算の先送りに過ぎないのだから。
我々が生きている間にドボンするのかどうか。
今週もどうぞよろしく!
Shortman