おはようございます。
Shortmanです。
※今週の週報は過去ネタを使うので、分量があります。短期的な売買には不向きな内容なので、時間の無い方は「今週の予想」部分だけをお読みくださいませ!
この記事が気になっています。
Bloomberg, イエレン氏:高いハードル提示、連邦準備制度のバランスシート縮小で
『イエレン議長は、将来の景気悪化に対処するための多少の利下げ余地があると当局が感じられるような水準まで、政策金利を十分引き上げるのが先決で、バランスシートの縮小に取りかかるのはそれ以後だと説明した。』
今年に入り、FRB高官ら(米セントルイス地区連銀のブラード総裁、米リッチモンド地区連銀のラッカー総裁、米ボストン地区連銀のローゼングレン総裁、米ダラス連銀のカプラン総裁、米サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁、米シカゴ連銀エバンス総裁等)によるFRBのバランスシート縮小(テーパリング)を検討すべきだという発言が相次いでいます。
イエレンFRB議長の発言はこうしたFRB高官らの発言を意識してのことだと思うし、実際に利下げの余地を残せるほど金利を引き上げておきたいいうのも本音であろう。しかし、Shortmanはもっと深読みしていて、米国債が売り圧力に晒されている中で、米債の購入を減らせば、再びバーナンキ・ショックを起こす可能性が強いだけでなく、米国債の買い手が不足してしまい、利回りが急上昇してしまうリスクも警戒しているのではないかとも思っている。そうなれば、過度のドル高を招き、製造業にとっては相当な痛手を被ることになるからでしょう。
しかし、米国経済の景気を反映して、さらなる利上げが現実味を帯びている中、こうしたバランスシート・縮小の議論は当然と思います。
昨年の夏にこんな記事を書いているので掲載しておきます。
2016年8月23日の為替日報
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先週だが、次の記事がどうしても気になっている。
Bloomberg, グリーンスパン氏:米金利は近い将来に上昇へ、恐らく驚くほど急速に
『グリーンスパン元米連邦準備制度理事会(FRB)議長は金利が近く、恐らく急速に上昇し始めるだろうと予想した。』
2001年から歴史的な低金利政策を行って、米国の住宅バブルを引き起こした張本人であるグリーンスパン元FRB議長が、金利上昇が近い将来起こると予測している。
これはFRBによる利上げが引き起こすのか、それとも、FRBによる米国債購入の減額、つまり、テーパリング(Tapering)によるものなのであろうか。テーパリングとは、量的金融緩和を行っている中央銀行が、国債等の資産購入の規模を徐々に縮小して、量的緩和を終了して、最終的には資産購入額をゼロにすることである。
しかし、このテーパリングは非常に難しい。
実際、2013年の5月から6月にかけて、「バーナンキ・ショック」と呼ばれる株価の暴落と金融市場の混乱があった。これはまさにテーパリングが原因となった。2013年5月22日に、バーナンキ前FRB議長が、債券購入のペースを徐々に減速させて、量的緩和を縮小する可能性を示唆し、さらに翌月の6月19日に、FRBは2013年中に債券購入金額を減額して、2014年半ばに完全に終了すると発言をしたことで、世界的な流動性懸念が生じ、新興国の通貨や株式などから資金が流出し、金融市場が不安定化した。
また、日本でも1998年11月から1999年2月にかけて起きた「資金運用部ショック」がある。たかだか1,000億円程度の国債を購入し続けていたが、当時の大蔵省(現・財務省)の資金運用部による日本国債の購入を停止すると1998年12月22日に公表したことで、日本国債が暴落して、わずか三ヶ月で長期金利が0.8%台から2.4%まで急騰した。この時日経平均株価は1998円11月の高値15,320.23円から1999年2月にかけて安値13,122.61円まで約2,000円以上下落した。その当時で毎月1,000億円程度の購入しかなかったのに。
以前からこう書いてきました。
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『リーマン・ショックを招いたのも、リーマン・ショック後の新興国バブルや商品価格の高騰を招いたのも、そして新興国に景気後退をもたらし、商品バブルをはじけさせたのも実はFRBの金融政策だということを忘れないようにしましょう。世界的に景気の先行きが不透明な状況で、米国が金利を引き上げると、ドル・キャリートレードは終了して、新興国などからドルが急激に流出することになることにも注意しないといけない。そうなるとそれでなくてもドル需要が強い新興国では、景気のさらなる悪化が今後生じるリスクが高いと考えられる。アメリカの統計データを見る限り製造業は海外需要の落ち込みにより苦戦している。この状況で、今回の利上げによるドル高が加われば、米国の製造業は一段と苦戦を強いられるであろう。』
アメリカ経済を安定化させようとする中央銀行(FRB)の金融政策が、かえって世界経済の不安定化させるということに注意してください。
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世界経済を巻き込んで不安定化する要素を創造し続けているのが、米国の中央銀行FRBですが、それぞれの国でバブルを生じさせたり、はじけさせたりしているのは、それぞれの国の中央銀行です。
今は中央銀行が国債購入を続けているので、債券バブル状態です。
債券バブルがはじければ、金利は急上昇します。
昨日の週報で『過去日銀が購入したきた国債購入枠が、一度も縮小していないという歴史的現実』と書きました。
軽く日銀や政府(旧大蔵省資金運用部)の日本国債の購入の歴史を見ておきましょう。
日銀の国債購入の始まりは1967年だが、政府側の意図的な国債の買い支えは、1993年から大蔵省の資金運用部が国債購入を開始したのが始まりだろう。2001年3月まで継続したが、財投債の発行と量的緩和の開始により、日銀の国債購入が始まった。これを境に、日銀の国債購入ルールは緩くなっていった。例えば、購入対象となる国債も発行から1年以上の国債という1年ルールを無くし、さらには日銀券の発行残高を超えないという日銀券ルールを作成し、購入限度額の4,000億円という上限を外した。2010年10月には包括緩和策が示され、別枠での国債購入が開始。日銀の国債購入の自主ルールであった、日銀券の発行残高を超えないという日銀券ルールさえなくなった。ただ、購入対象は中期債に限定されていた。
そして、黒田日銀総裁が誕生して、2013年4月に量的・質的緩和が開始された。長期国債の保有残高が年間50兆円に相当するペースで増加するような国債購入を行い、購入対象も40年債を含む全期間となった。さらに、黒田総裁は己の政策の効果が確認できずに、さらに追加緩和を行った。2014年10月の量的・質的緩和の拡大で、長期国債の保有残高が年間80兆円に相当するベースで増加するよう増額された。この数字は借換債を含まないでほぼ政府が年間に発行する新発債の予定額とほぼ同じ金額である。
そして、1967年に日銀が日本国債を購入して以降、一度も購入枠の減額が行われていないのだ。
資金運用部ショックという事態を経験しているので、それは避けたいのかも知れない。最近ではバーナンキ・ショックもあり、金融市場への影響は避けれない。
その気持ちはわかる。
なぜ白川・前日銀総裁が日銀券ルールを撤廃しながらも、国債の買い入れを別枠で行い、さらいは購入対象を償還までの期間が比較的短い中長期債に絞っていたのかは、中央銀行による国債購入枠の減額であるテーパリングがいかに難しいことであるかを認識していたからである。
黒田日銀総裁が行ってしまった罪深い失策は、①外的要因で景気が回復したことを認識せず、②効果がないにも関わらず、国債購入上限を段階的に引き上げてしまい、③さらには長期債を購入対象にしてしまい、④全く効果の無いマイナス金利を導入してしまったことというように、全部である。
ほぼ100点満点の出来の愚策だ。
今や国債市場の最大の買い手は、中央銀行になってしまった。他の参加者達も日銀がBig Playerであることを前提に、債券を保有する。ここに既に国債市場に歪みを生じさせ、本来自発的に存在すべき需給関係が大きく崩れてしまっている。
相場は需給で決まる。
私は以前このレポートでも日銀審議委員に関して『今回の日銀の金融政策決定会合を見ていて、政策委員、というか、審議委員の方々には、年俸で2,600万円以上(日本銀行における役員の給与等の支給の基準)も受け取っているのだから、野村総研出身の木内登栄審議委員を見習って、もうちょっと真剣に提案とかして欲しいなと思います。』と少しだけ意見を書いた(注1参照)。
日銀の木内委員は毎回自分の意見を主張しているし、一貫して日銀の国債購入枠の減額を提案してる。今は、日銀政策委員の中の唯一の良心と私は思っている(注2)。
昨年末の記事だ。
ロイター, 永遠には国債買えない、限界意識されれば金利上昇=木内日銀委員
『日銀の木内登英審議委員は3日都内で講演し、年間80兆円(残高ベース)の国債買い入れを「永遠には続けられない」ため、市場で買い入れの限界が意識されれば金利が上昇するリスクがあると警鐘を鳴らした。自身が提案する買い入れ減額の必要性を主張するともに、急激な円高・株安には一時的な大量の資金供給が望ましいとの案を示した。』
永遠には国債は買えない。
仮に永遠に国債を購入すれば、実質ヘリコプター・マネーと同じ扱いとみなされてしまうであろう。
木内審議委員は45兆円まで減らそうと提案し続けている。もちろん毎回反対されてしまっているが、彼の主張は正しい。
黒田日銀総裁は、マイナス金利を導入し、インフレ目標2%を達成するまで、マネタリー・ベースの残高を積み上げて期待に働きかける為に、長期国債を無期限・無制限に購入し続けているが、効果は無い。日本は今完全雇用状態だ。インフレが目標に届かないのは、金融政策のせいではないと考えられないのか?私は9月の「総括的な検証」で、黒田総裁が己の愚策には効果が無いことを素直に認めて検証をきちんとして欲しい。何よりも中央銀行家が、できもしないのにできるふりをすることは非常に危険だと思う。そんな丁半博打に国民を道連れにしないで欲しい。
個人的には、効果が無いにも関わらず国債購入を拡大させてしまった以上、過去の例にならってこのまま放置するのではなく、きちんと段階的にでも縮小させるべきだと思う。もちろん、今の状況で国債購入枠の減額は必ず債券バブルの崩壊につながり、長期金利の上昇を招くので、市場との会話を重要視しながら進めて欲しい。
三菱、郵貯、金融庁から懸念を示されソッポを向かれ、市場参加者からは既に見透かされている現状では、それを期待するのは非常に難しいかも知れないが、金融正常化へは市場との会話と信頼の構築は避けては通れない。このまま放置して、一段とテーパリングが難しい状況に自らを追い込んで、日本国民と日本国債を一段と危機に晒す権利は、黒田日銀総裁には無い。それよりも、今回の検証で多少の痛みを伴いながらも、正常化への道筋をつけるのか。正直、運命の別れ道になるかも知れない。
中央銀行に求められる役割は時代と共に変化し、現在では金融政策と財政政策の境界線が不明確化しつつありますが、中央銀行ができることとできないことはきちんと線引きすべきだし、やはり、できもしないことをできるなんて嘘をついてはいけないと思う。金融政策は本当に解決策を導き出すまでの時間稼ぎ。金融政策は病人に与える薬と同じ。病気の症状を抑える薬の役割だからだ。病気を根治させるのは、己自身の生命力。日本経済の持つパワーが回復しなければ、日本経済が抱える様々な問題は解決しない。
今回の検証では、ミスをミスと認め、「できること」と「できないこと」ことをはっきりとメッセージで伝えて欲しいとも思う。
目先のドル円相場には何の関係もないけど、これから10年後、20年後に振り返れば、このテーマがいかに大事だったかがわかるほどの事態が今なのだ。
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こうしたことを考えながら、FRBが債券購入を止めた場合、株価や為替だけでなく、経済へどんな影響が出るのかをずっと考えています。
2016年2月29日の為替週報から。
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※ここでの議論は割愛しますが、単なる日銀の国債買いオペは現金と預金の比率を変えるだけに過ぎず、下の図でわかるように、国民の資産を増やすことにはなりません。
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この図は日銀の買いオペを示したものだが、テーパリングは日銀のバランスシートを縮小させることなので、売りオペを実施することになり、この図で行われたことの逆を考えれば良いでしょう。
日銀をFRBに置き換えて、国債を米国債に置き換えるて考えてみてください(上の図の下段「ゼロ金利から」から上段「通常」に戻るケース)。
買いオペが国民の資産を増やすことが無かったのと同様に、単なる売りオペで国民の資産を減らすことは無いです。しかし、市場に出回る貨幣の量が縮小してしまうので、景気や株価などに影響が出そうですね。
でも、トランプ氏は減税とインフラ投資でそれを相殺するかも知れません。
この15年間で約3倍以上に膨れ上がった米国の連邦債務は20兆ドルを超えました。そして、トランプ政権が大規模減税・インフラ投資を宣言しているので、今後も米国の連邦債務が拡大することは目に見えている状況では、米国債の価格が下落することは確実です。実際、米国債利回りが上昇してきているのは、既に米国債が売られているからに他ならないです。そんな状況でFRBがバランスシートを縮小するために、保有する米国債を赤字覚悟売却するとは思えません。
そうなるとFRBのバランスシートを縮小させる方法は、乗換をしない。つまり、保有する米国債はそのままで、新規の米国債の購入を止めることで時間をかけて、バランスシートを縮小させることだと思います。
膨れ上がる連邦債務の現状を見て、トランプ政権が減税にインフラ投資を行うという拡張的な財政政策を行うことがわかっているその上で、「FRBの誰か他に米国債の買い手がいるのか?」という疑問が生じます。
難しい・・・いなそうな気配ですね。
2017年2月13日週の概況:
前週末の日米首脳会談で、トランプ大統領から円安や緩和的な金融政策への批判はなく、逆に日米の良好な関係が示されたことで、リスク回避的なムードは消えて、112円台で終えた前週のドル円は週初から114円台へ上昇。14日にフリン米大統領補佐官の辞任報道で、一時113.25 まで下落したが、イエレンFRB議長の議会証言が14日・15日に行われ、3月の利上げの可能性も排除しない姿勢を示したことでドル円は 114.50円まで急伸した。FRB高官の利上げを主張するタカ派的な発言も相次ぐ中、15日に発表された1月の米消費者物価指数(CPI)や米小売売上高が予想よりも強く、ドル円は114.96円まで上昇。しかし、NY株価が史上最高値を更新するが、米長期金利が上げ渋ったこともあり115円台には届かなかった。その後は、欧州の政治不安に対する市場の警戒感が再び高まっており、ドル円は一時112.58円まで下落した。
今週の予想レンジ:
111.00円~115.00
2017年2月20週の予想
トランプ米大統領が2月28日に上下両院で演説するので、それまでは基本的に先週同様にレンジ相場を想定しています。また、トランプ大統領の演説を前に、減税策が公表される可能性があり、その内容次第でドル円相場は上か(円安)か、下か(円高)がはっきりしてくると予想しております。但し、22日に前回のFOMCの議事録が公表されます。その内容に3月の利上げを含ませる内容があった場合も、円安方向へトレンドを変える可能性があるので、注意しておきたいところ。
参考:
2017年2月16日の為替日報より
『昨日はトランプ大統領が小売業界幹部と会談したとのことで、再び減税の話題が取り上げられましたね。
Bloomberg, トランプ米大統領、税制改革案を近く提出へ-小売企業経営者らに語る
『トランプ大統領は15日、ホワイトハウスで開かれたターゲットやJCペニー、ギャップなど小売企業の最高経営責任者(CEO)との朝食会で、税制改革について「米経済にかなりの影響を与える絶好の機会の一つになる」と発言。「そう遠くない将来に」提案を公表すると述べた。同CEOらは米企業の国内収入や輸入品に課税する一方で、輸出品は免除するという下院共和党の計画に反対を表明するためにワシントンを訪れた。』
『そう遠くない将来に』・・・早くして!
参考までに、先日2017年2月14日の為替日報に記載した内容を再掲しておきます。
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さて、今年に入ってから一貫して私が注目して待っているのは、トランプ大統領が打ち出す「減税策」と「インフラ投資」の内容です。
大統領選の時にトランプ大統領が打ち出した注目すべき減税案は、大きく分けて以下の内容かなと。
① 法人税減税 ⇒ 税率を35%から15%に引き下げ
② 個人所得税減税 ⇒ 所得税の累進区分についても、現行7区分を3区分(累進税率を12%、25%、33%)へ(特に最高税率は現行の39.6%から33%に引き下げ)
これに加えて、配当及びキャピタルゲイン課税の減税延長、相続税の廃止、米企業の海外留保利益について税率10%のみなし課税等を提案している。
基本的には小さな政府が好きな共和党なので、減税は理解できます。
問題はこの事前に打ち出した公約通りかそれ以上ならドル買い。それ未満ならドル買い需要は期待が薄いかなと考えております。先日の記事だと、法人税率は20%程度のような内容が漏れ伝わっています。
それと、金額ベースでは向こう10年間で5兆ドル規模が想定されているので、年間でGDPの約3%位の金額が減税に回されるので、2018年以降はそれなりの景気浮揚効果が見込まれるかなと思います(それにしても株高は行き過ぎな感じを受けるけど…)。
***************』
定点観測:
ダウとドル円
ドル円と米2年債利回り
ドル・インデックスと米10年債利回り
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金価格
原油価格
Shortman’s View:
相場には関係の無いので、読まなくても大丈夫です。
米国の株式市場は市場最高値を更新しています。また、不動産価格もリーマン前の水準に回復しました。これは単にFRBが米国債を購入しているからだけではなく、米国政府が国債を大量に発行し続けているからではないかと思っています。日銀のバランスシートは400兆円を超える日本国債を保有していますが、緊縮財政をお題目に財政均衡を模索している日本は、米国のように株価は上がっていません。その辺を考えると、やはりこの背景には、米国の連邦債務の著しい増大があるからではいかと私は考えています。
FRBがテーパリングで米国債の新規購入を止めるとすると、金融引き締めになり、市場に流通するマネーの量は減るので、株価は下がるかも知れません。でも、トランプ政権が拡張的な財政政策をファイナンスする為に、米国債を大量発行して、それがどんな形であれ市中銀行が引受けてになれば、政府部門の支出は、民間部門の貯蓄に回り、貯蓄は投資へ回って、景気は上向きます。その結果、テーパリングのマイナス効果は総裁されるでしょう。
しかし、米国債の引き受け手が現れず、予定していた金額を政府が調達できないような事態や、米国議会がトランプ政権の拡張的な財政政策に反対し、緊縮財政を掲げて国債発行を減らす方向へ舵を切ると、単にFRBが米国債の購入を止めるという金融引締め以上に厳しい金融引き締めが生じるかも知れないです。
米国の株価は政策期待で上昇していますが、この先はどちらにころぶのかは今の時点ではわかりません。
そんなことを思いつつ、2016年2月29日の為替日報を再掲します。
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皆様が信じているお金は実は国の借金が裏付けになって発行されており、皆様が信じているから、お金として機能している・・・みたいな。
この「裏付け」をきちんとわかってもらう為には、この方法しかないかなと思ったので、為替とは直接関係ないですが、今回の説明を読めばきちんと理解できると思います。
今回は文章では難しくなるので、なるべく図を用いて理解してもらおうと思います。
今、非常にシンプルなモデルを考えましょう。
最初に、日本には財政赤字が無いとします。
その時の日銀、民間銀行のバランスシートはそれぞれこうなります。
今、この日本銀行と民間銀行という金融部門を統合してみましょう。![]()
日銀の資産である日銀貸出と、民間銀行の負債である日銀借入が相殺され、民間銀行の資産である日銀準備と、日本銀行の債務である民間銀行からの預入の日銀準備も相殺され、統合した日本銀行と民間銀行のバランスシートは、資産に貸出が残り、負債に現金と預金が残ることになります。
では、次に民間の銀行でない部門(民間非銀行部門)、つまり、家計と企業のそれぞれバランスシートを見てみましょう。
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日本の場合、家計部門は貯蓄超過で、民間企業部門は借入超過です。
※正味資産は貯蓄の累積額、実物資産は投資の累積額と考えてください。
この時、民間非銀行部門(家計と企業の統合)のバランスシートはこうなります。
民間これは先程日本銀行と民間銀行部門の統合したバランスシートの資産と負債が入れ替わった状態になります。
今、政府に財政赤字は存在しないので、社会全体のバランスシートは簡素化すると以下のように表すことができます。
社会全体では、民間銀行からの貸出残高は、社会全体の現金と預金の合計(マネーストック)に等しくなります。
今回の議論はここからスタートします!
この状態で、何らかの理由(多くの場合は政治家と官僚の失策)で日本政府に赤字が生じてしまい、日本政府が国債を発行するケースを考えてみることにします。
日本政府は必要な政府支出(財政赤字)を補うために、国債を発行しますので、政府、日銀、民間銀行のバランスシートは以下のようになります。
※市中消化の原則に従って、民間銀行が国債を引き継ぎ、その後で日本銀行が買いオペで日本国債の一部を買い入れた状況です。
では、先程のように日本銀行と民間銀行を統合してみましょう。
次に民間非銀行部門を見てみましょう。
政府は国債発行で調達した資金を、政府支出として民間非銀行部門へ支出しますので、一部は企業部門への発注となり資金が流れ、さらにその一部は企業部門と通じて給与として家計部門にも渡ります。また、所得税減税や手当等を通じても家計部門に渡ります。
こちらも非銀行部門として統合します。
したがって、社会全体ではこのようになります。
日銀と民間銀行の統合されたバランスシートに存在する貸出と国債の合計が、民間の非銀行部門の保有する現金と預金の合計(マネー・ストック)に等しくなっています。
これは非常に面白いことを示唆しています。
確かに最終的には赤色部分の政府支出(財政赤字)は、青色部分も民間非銀行部門の貯蓄超過分で賄われています。
しかし、思い出して欲しいことがあります。
最初に青色の民間の非銀行部門の貯蓄超過が存在したのでしょうか?
いえいえ、政府に財政赤字が生じる前には、貯蓄釣果は存在していません。
あら、不思議。民間非銀行部門の現・預金が増えています!!!
赤字国債発行前には、家計や企業部門に貯蓄超過分は存在していなかったにもかかわらず、国債を発行するとマネー・ストック(現金+預金)が増加しています。
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そうなんです。
民間非銀行部門の現金・預金が増えたのは、中央銀行(この場合は、FRB)が買いオペをしたからではなく、政府が国債発行を増やしたからです。
だから景気を良くするには財政赤字を拡大しないといけないという結論になってしまいます。
実際、2001年にブッシュ政権が誕生した時は約6兆ドルの連邦債務でしたが、オバマ前大統領が就任した2009年1月の連邦債務は約12兆ドルと約2倍に膨れ上がっていました。そして、今回のトランプ大統領になった時は約20兆ドルなので、オバマ前大統領は8年間で約8兆ドルの財政赤字を拡大させた計算になります。その分を米国債発行で賄っているとすると、米国の民間非銀行部門の現金・預金が増著しく増えて、その資金が株式市場や、商品市場、新興国市場へと流れだしたと理解できます。
ということは、逆もまた真なりで、緊縮財政を唱えて財政バランスを気にして増税すると景気は落ち込むことになります。
2016年5月30日の為替週報「今週も様子見かな」より抜粋。
『さて、サミットが終わり、マジで予想通りなんだけど、安部総理は消費税増税を延期したいらしい。
ロイター, 安倍首相が消費増税の2年半延期を政府・与党幹部に伝達=関係筋
『安倍首相は先の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、世界経済が危機に陥るリスクに直面しているとの認識を共有したと説明。金融、財政や構造改革などあらゆる政策を動員するのに併せ、消費税率10%への引き上げを2年半先送りし、19年10月とする意向を伝えた。』
これは当然の判断だと思っている。
国にバランスシートでも説明したが、国の債務である国債残高を減らすようにすることは、家計の資産を減らすことに他ならないだけでなく、それでなくても景気の足を引っ張っている個人消費を、一段と低迷させてしまうからだ。
この図を見て欲しい。これは2010年を100とした場合の消費水準指数だ。

出所:総務省統計局, 家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯)よりShortman作成
1987年に消費税が3%になる前まで消費水準は右肩上がりで上昇してきた。3%になった後はしばらく横ばいで、ほぼ変わらなかった。しかし、5%に税率を上げて以降は右肩下がりとなり、8%に増税されると消費水準は一段と低下している。
つまり、消費税増税は個人消費を低迷させる要因の一つということがわかる。
なので、ここで消費税を10%に上げることは、日本の消費をさらに低下させて、景気を一段と悪化させてしまうことになる。なので、消費税10%を延期したことは、少なくとも目先の景気対策として、私は正しいと思っている。。』
あちゃー!!!
増税(=政府債務の減少)で消費が落ち込むという現象。
困ったモンダミン。
つまり、バランスシートで見ると、銀行の信用創造なんか無くても、政府の赤字を国債でファイナンスするのと景気が良くなるっていうシナリオが導き出されてしまうのだけども、技術的には理屈を理解できるけど、やはり直観的に理解できないことがあります。
私には、赤字国債発行前のドルの価値と赤字国債発行後のドルの価値が同じとはどうしても思えない・・・
株価が史上最高値だとしても、他国も債務が増えているとしても、天文学的に増える国家の借金がベースで、ドルの価値が同じか上昇するってのが、生理的にどうも腑に落ちないです。こうしたインチキを見ていると、最近の仮想通貨の動きがわかる気がします。そして、間もなく中央銀行券や政府紙幣が終わるであろうことは誰の目にも明らかだと思います。
私も4月からですが、選ばれし者にだけに付与される仮想通貨の提供を開始したいと思います(^_-)。
今週も宜しくお願い申し上げます。
Good Duck!
Shortman
追伸、
このニュースは地政学上のリスクを高めるので、頭の片隅に置いておいた方が良い。
どういう思惑で米中は北朝鮮を追い込むつもりなのか。
仮に北朝鮮を追い詰めたらどうなるのか…
窮鼠猫を噛む
チュー!!!
って、ことでミサイルが飛んでくる先は米軍基地がある日本か韓国だろうな。
飛んで来ないことを祈る。