おはようございます。
Shortmanです。
市場の心配事は2つ。
① トランプ大統領とロシアとの関係から政治的な混乱が生じ、減税策やインフラ投資政策が遅れること。
これに関してニュース取り上げておきます。
トランプ大統領はコミー前FBI長官に対して、録音テープの存在をほのめかしながら、発言を控えさせようとしていました。
ロイター, トランプ氏がコミー氏けん制、会話テープの存在ほのめかす
しかし、コミー前FBI長官は議会で証言するようです。
Bloomberg, コミー前FBI長官、議会証言へ-初外遊のトランプ大統領に圧力
これは楽しみです。
そして、コミー前FBI長官の更迭から、ロシアへの機密情報漏洩にまで発展し、トランプ氏は「魔女狩り」と喚き立てているが、彼の支持率は下がる一方。
ロイター, トランプ氏支持率38%、就任以降で最低=ロイター/イプソス
仮にロシアゲート事件にまで発展し、トランプ大統領が弾劾されても、副大統領のペンス氏が大統領に昇格した方が、議会との関係は良くなるかも知れないと個人的には思っているので、5月18日のレポートにこう書きました。
『後から煽るのが得意なロイターの記事の最後の部分に注目!
ロイター, 焦点:「トランプ・トレード」巻き戻し活発化、政権に不透明感
『ただ大統領職をペンス副大統領が引き継ぐとすれば、必ずしも市場にとってマイナスではないかもしれない。スタンダード・ライフ・インベストメンツのグローバル・シーマティック・ストラテジスト、フランセス・ハドソン氏は「政策手法の面では(ペンス氏とトランプ氏に)大きな差はないだろう」とみている。』
いや~、明らかにトランプ大統領よりはマシでしょう!!!』
では、ペンス副大統領が大統領へ昇格した場合、どのようになるのかなと考えないといけないのですが、そのことに関してロイターが記事を掲載していた。
ロイター, コラム:「ペンス大統領」ならどうなるか、投資家は頭の体操を
『大成功であったかどうかはさておき、ペンス氏の政策は「ペンソノミクス」の名称を奉るほど独創的なものではない。むしろ、従業員より投資家に利する政策を優先する、オーソドックスな保守派の信条を反映していると言っていいだろう。そうした政策は、革新派の民主党員や、より温情に厚い保守を自任する人々には受け入れられないだろうが、共和党員だけでなく、産業界や金融界の多くの人々に訴求する力がある。』
市場はそれを歓迎している感がある。
Bloomberg, トランプ氏からペンス氏に大統領交代、それが市場の希望-チャノス氏
『空売り投資家として知られるジム・チャノス氏はトランプ政権は「機能不全」だと批判し、金融市場はペンス副大統領の大統領就任を望んでいると述べた。
民主党候補者をこれまで支持してきたチャノス氏は、投資家が求めているのは共和党の政策綱領を実施できる「もっと安定した」人物だと説明。ラスベガスの会議でメディアに対し、「最終的に市場は減税と規制緩和を期待している。共和党支持の友人らに話す冗談だが、キャピタルゲインや所得に対する減税は素晴らしいが、不運なことに共和党の大統領の下では肝心の所得が生まれない」と語った。』
『投資家が求めているのは共和党の政策綱領を実施できる「もっと安定した」人物』となると、ペンス副大統領が選択肢の中では1番になるよね。
そして、もう1つの心配事。
② 地政学上のリスクで、北朝鮮のミサイル及び核実験が内政的に不人気なトランプ氏を刺激して、北朝鮮と小競り合いをして、市場のムードがリスク・オフになること。
アメリカのマティス国防長官は軍事的な解決より外交的な解決を目指していると言う。
ロイター, 北朝鮮問題の軍事的解決、「想像絶する悲劇」引き起こす=米国防長官
『マティス米国防長官は19日、北朝鮮問題をめぐるいかなる軍事的な解決も「想像を絶する規模での悲劇」を引き起こすとし、米政府は外交的な解決の模索に向け日中韓などと協力して取り組むとの意向を示した。』
しかし、アメリカは空母カールビンソンに加え、空母レーガンも朝鮮半島沖合に派遣して、北朝鮮への圧力を強めている。
しかし!!!
そんな空母を2隻派遣したくらいでは北朝鮮はびくともしません。
ロイター, 北朝鮮が再び弾道ミサイル、2月の中距離弾と同型の可能性
『日韓両政府は21日夕、北朝鮮が同国西岸から弾道ミサイル1発を発射したと発表した。ミサイルは約500キロ飛行し、日本海に落下したとみられる。北朝鮮の弾道ミサイル発射は、この1週間で2回目。』
それどころかトランプ大統領の中東・欧州への初の外遊に合わせて、ミサイルをまた発射してきた。
市場はこのリスク・ファクターに関してかなり軽視しているが、米朝共にこれ以上の動きが取り難い状況かなと感じられます。
とは言え、市場だけでなく海外のメディアも、あまりにもこの問題を軽視してうるような気がしてならない。ブラックスワンにならなければ良いのだが・・・
2017年5月15日週の概況:
先々週の週末には北朝鮮がミサイル発射実験を行ったこともあり、地政学的リスクが懸念され、ドル円は113.18円で寄り付いた。その後はサウジアラビアとロシアが原油の協調減産の期限を来年2018年3月末までの延長を支持するっことで合意と報道されると、原油先物価格が上昇すると株価も上昇し、ドル円も週間高値となる113.85円まで上昇した。17日の水曜日にはトランプ大統領によるロシアへの機密情報漏洩問題や、更迭したコミー前FBI長官へのフリン前大統領補佐官への捜査の中止要請等の疑惑が浮上しNY株価・米国債利回り・ドルが急落して、ドル円は翌日18日に110.21円まで下落した。しかし、110円台前半は買い需要も多く、いくつかの経済指標を手掛かりに株価が値を戻し、ドル円も一時 111.70円まで値を戻した。
今週の予想レンジ:
108.50円~112.50円
2017年5月22日週の予想:
週末に再び北朝鮮がミサイルを発射したこともあり、やや地政学上のリスクがやや警戒されるであろう。但し、北朝鮮が米国や日本、韓国へ実害を伴う攻撃をしかけている訳でもなく、米国が一方的に北朝鮮へ攻撃を加えることは、難しい状況なので、実害が出ないかぎりは大きなリスク要因にはなり得ない。次にトランプ大統領が抱えるロシアとの疑惑が早期に解消される見込みは少ないものの、調査には時間を要するので膠着感も出てしまう。したがって、基本的に政治リスクは懸念されるものの、短期的には大きなリスク要因にはなり難い。であろう。そうなると経済指標等に敏感に反応する展開が予想されると同時に、23日には米行政管理予算局(OMB)のマルバニー局長が2018年会計年度の予算教書を議会に提出する予定であり、内容次第でドル円が大きく動くことへも警戒をしておく必要があろう。
定点観測:
ダウとドル円
ドル円と米2年債利回り
ドル・インデックスと米10年債利回り
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VIX
金価格
原油価格
Shortman’s View:
ようやく提出されるトランプ政権の予算教書。
議会でいろいろ議論され、議会で承認を得ようとして、議員達により骨抜きにされる可能性もある。だからここからがスタートの位置と言うこと。
問題がトランプ氏の政治スキャンダルに向かいがちですが、市場にとって大事なことは、今回のスキャンダルでトランプ氏が公約で掲げてきた様々な経済・財政政策の実現が遅れてしまうことですが、どうやら動きが出て来そうです。
ロイター, トランプ米大統領、今後10年で2000億ドルのインフラ支出提案へ=高官
『トランプ米大統領がインフラ投資向けに今後10年で2000億ドルの支出を提案することを計画していると、ホワイトハウス高官が19日明らかにした。23日に発表する予算教書に盛り込まれる。
2000億ドル規模の政府支出によって、さらに民間から8000億ドル規模のインフラ投資を促すことを狙うという。』
Bloomberg, トランプ大統領、予算教書で10年以内の財政均衡提示へ-関係者
『トランプ米大統領は向こう10年以内に連邦財政収支を均衡させる案を議会に提示する。裁量的経費と補助金の大幅な削減で収支均衡を図る。米政府関係者が明らかにした。
(途中省略)
また教書では成長率が2021年までに年3%に達すると見積もっており、議会予算局(CBO)が想定する1.9%を大きく上回る。』
んんん?
向こう10年で2,000億ドルの公共投資を行いつつ、財政収支の均衡を図るという。その為に必要な経済成長率は年3%だそうで、議会予算局(CBO)の予想平均成長率1.9%も上回る成長率だという。
Shortmanから一言。
無理でしょう!!!
理由ですか?
5月1日のレポートを読み直しましょう。
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大事なことは、トランプ大統領の減税策を受けて、早くもそのコストの計算が行われております。つまり、どれくらい財政赤字が拡大するのか?です。
CRFB(The Committee for a Responsible Federal Budget is a nonpartisan, non-profit organization committed to educating the public on issues with significant fiscal policy impact.)というNPOの資産が速攻リリースされております。
Fiscal FactCheck: How Much Will Trump’s Tax Plan Cost?
『But making some assumptions based on prior proposals, our best rough estimate suggests the specified parts of the plan would cost $5.5 trillion. Assuming tax break limits only apply only to higher earners, that cost could be as high as $7 trillion; assuming credits and exclusions are eliminated as well as deductions, it would cost $3 trillion.』
今判明している数字だけで向こう10年間の減税策のコストを大雑把に計算すると、ベスト・シナリオで5.5兆ドルで、最大では7兆ドルだそうですよ。
※この米国債の増加分は財政赤字を反映しており、将来の増税を意味しているので、長期的に見れば金利高と物価高で景気が上向かない可能性がります(大学院生はISLM分析を参照のこと。基本中の基本です)。
しかもこう続いている。
『Growth Can’t Pay for This Tax Cut』
経済成長では減税分を補えない
あちゃー!!!
『Even if tax cuts could generate more growth than estimated, no plausible amount of economic growth would be able to pay for a substantial portion of the tax plan, let alone reduce deficits. The country would need roughly 4.5 percent sustained growth to pay for the entire tax plan – two-and-a-half times the 1.8 percent that CBO projects to occur over the next decade. As we explained in Don’t Count on 4% Growth, the last time the country achieved even 4 percent sustained growth was in the late 1960s and early 1970s (though we came close during the technological boom of the 1990s). With an aging population, those growth rates are no longer possible. Achieving just 3 percent growth would require productivity growth to rise to the record levels set in the late 1960s and early 1970s.』
仮に減税が経済成長を促したとしても、それだけで税収不足を補うことはできず、仮にこの税再改革案を成し遂げようとすると4.5%もの成長率を維持し続けないといけないという。
1960年代、70年代なら経済成長も見込まれるが、今の時代は無理ですね・・・世界戦争でも起こせば別ですが(だから北朝鮮なのか!?)・・・
ということで、トランプ大統領は非現実的な税制改革案を公表しており、これがすんなり議会を通過するとかあり得ないですね。
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こちらも5月1日のレポートで紹介しましたが・・・
グリーンスパン元FRB議長がトランプ大統領の税制改革案に対して一言。
Bloomberg, トランプ大統領の予算案、計算能力に問題あり-グリーンスパン氏
『グリーンスパン氏は28日にブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、トランプ大統領の「計算能力が問題だ」と発言。問題は減税や国防支出増加に釣り合う連邦歳出の削減に積極的ではないように見えることだと指摘し、特に必要なのは年金や高齢者医療に関するいわゆる給付支出の削減だと論じた。』
出鱈目ですね!!!
今週もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
Good Duck!
Shortman