明けましておめでとうございます。
本年もShortmanを宜しくお願い申し上げます。
さて、高齢になりましたShortman、違う!恒例となりました年始の予想。
超恥ずかしいですが、昨年の予想から振り返っておきます。
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前年の予想を毎年1月に総括するのは、マジで恥ずかしいですが、今年もやりましょう!
2016年の予想レンジは100円~125円でしたが、果たしてどうでしたでしょうか???
2016年のドル円相場概況:
2016年1月1日のドル円120.30円で取引を開始し、1月に121.68円、2月に121.47円と121円台に戻すも、その後は円高が進行。6月のEU離脱が決まると、ドル円は一時99.08円まで円安が進行した。その後、ドル円は翌7月に107.47円までリバウンドで持ち直すものの、8月には再び99円台へ突入し、99.53円まで円高が進行した。その後は概ね100円~105円台で推移していたが、トランプ次期大統領が誕生すると、次期政権への期待からドルの買戻しが進行。11月にはトランプ勝利が決まると101.15円まで円高が進行したが、その後の勝利演説で融和と公共投資の拡大を打ち出したことから、インフレ期待に金利上昇を織り込んだドルの買戻しが加速。114.53円まで実に13円以上もの円安となった。12月のFOMCで利上げが決まると、ドル円は118.66円まで買い進められた。
2016年は年初のドル高に伴う新興国経済の失速などから景気先行き不安が増して、リスク回避の円買いに。その後は6月に実施された英国のEU離脱を問う国民投票の結果を受けて、ドル円は100円近くまで円高進行し、11月の大統領選挙までは政治経済の景気先行き不安にリスク回避の円買いが継続した。その流れを変えたのは、トランプ氏が次期大統領に当選したからであろう。
大規模公共投資や減税を掲げ、株価は堅調に推移し、ダウは2万ドル目前まで上昇。リスク回避な2016年から今度は一気にリスク選好的な相場へ変化。インフレ・金利の両見通し共に上昇しており、リスク回避の円買いを解消して、ドル買い戻しの原動力になった。
2016年の実際のドル円:
99.08円~121.68円
まぁ、年初の概ね私の予想レンジも正しかったなと思います。
トランプ政権のスタート:
今年は年初からググッと円高へ向かうかなと思わせておいて、結局は今のところ昨年末と同じ水準と言うドル円ですが、「今年は円安だろう」という大方の予想とは別に、密かに「じりじりと円高」を予想しておりますが、正直まだ何もわかりません。
私は政治学者でも、評論家でもなく、為替を見ている個人として、なぜトランプ氏を応援していたかを年初の書こうと思います。一個人の戯言ですので、「そうじゃないだろう!」と思うことがあっても、それはそれでご愛敬ということで(^_-)
今年第一回の金融大学院での講義では、トランプ氏の勝利演説で株価が回復、ドルが買われ円安が進行した背景を、マクロ経済的な視点で解説しますが、私は常に時間軸を1年先や数年先で政治経済を捉えようとしているので、トランプ政権の誕生に伴う負の側面の影響の大きさに注目しております。
決して経済学の教科書には記載されておりませんが、Shortmanが円高予想している背景には、「波乱・混沌・破壊」というような要素があるということを今年最初のレポートで示しておきましょう。
年初から私が期待したように、トランプ氏がいろいろと本性を剝き出しにしてきたかなと、心からワクワク。ドキドキしております。
ロイター, トランプ氏がGMメキシコ工場に矛先、多額の国境税課すと警告
ロイター, トランプ氏、トヨタに警告 「メキシコで製造なら高関税」
トヨタはアメリカでカローラを製造して販売しているのであって、トランプ氏の主張はマジで言いがかりに過ぎない。実際は、トヨタのカナダ工場の生産ラインをメキシコ工場へ移すというもの。浅はかな感情剥き出しの暴君丸出しで、トランプ氏のレベルが知れたということ。
そもそもGMだって、そんな質の良い車ではない。家畜なアメリカ人しかほとんど買わない車なのに、アメリカ人の社員で作ったら、コストが加算でGMの利益が減るだけだろう…安くて無駄に大きな車だから買うのに。己の国の製造業を支援してんだか、足を引っ張んてんだかよくわからないお爺さんだ。
昨年末のレポートを読み返せば、私の主張はある程度わかっていただけるはずですが、少しだけここに再掲しておきます。
過激なことばを許してもらえば、(対日本の)戦勝国であるアメリカ国民の圧倒的多数は、思考を止めて、家畜化された肥満体の田舎者であり、国際社会なんか理解しようともしない方々のように私には思える。そして、そんな思考が停止した家畜民の感情に訴えかけて選挙戦に勝利したのが、トランプ次期大統領だ。
トランプ氏は選挙戦略の上で、極めて優秀なプレイヤーでした。思考能力がやや劣る少々オツムてんてんの白人の田舎者にターゲットを絞り選挙戦を勝ち抜きました。自らの地位が失われ凋落の一途をたどる家畜なアメリカ人の心に響く、いや、心ではなく、妬みの感情に響く言葉を投げかけて、群衆ではなく、家畜を扇動して勝利を掴んだように思えます。
その戦略は極めて上手でした。トランプ氏の勝利は、英国や欧州で起きている運動と同じで、既存エリート層というか、エスタブリッシュな連中への抵抗とでも言いましょうか、まぁ、既存支配層から漏れた連中が結束して、国や世界を支配している制度そのものへ抵抗して行こう的なスローガンでした。
「Make America Great Again!」
インポかよ!と昨年のレポートでは冗談のネタにしましたが、アメリカをどう再び強くするかとか具体的な戦略はほとんど感情論的な発言で濁し、愚かなる家畜を味方に付けて、最後はクリキントン女史を打ち破ってしまいました。その結果、傍若無人なトランプ氏を嫌う思考能力が辛うじて残っている勢力と、家畜勢力とにアメリカ国民は完全に二分化されてしまっているように思えます。
私は決してクリキントン女史や彼女の支援者達が素晴らしいとは思っていません。実際、私はトランプ氏を応援していました。その背景には、家畜には恐らく理解できないとは思いますが、私はトランプ氏が大統領になれば、恐らく「Make America Sick Again!」となってしまうと予想しているからです(もちろんそうではなく強いアメリカを取り戻すかも知れませんが・・・)。
そして、トランプ氏は選挙戦の中では散々言いたい放題に、金融機関のゴロツキ守銭奴達を批判しながら、蓋を開けてみればゴールドマン・サックスを中心に金融エリートに、アメリカの経済・金融問題を任せるというようなことをしております。これはさらアメリカの国民の間に不満を募らせることになると危惧しております。
Bloomberg, 次期政権の財務長官にムニューチン氏、ロス氏は商務長官に-CNBC
Bloomberg, トランプ氏、ゴールドマンのコーン氏にNEC委員長就任要請-関係者
こいつらが愚かなる家畜の面倒を真剣に見ると思いますか?
絶対にない!
金融エリートは凋落してゆく白人同胞がどうなろうと、己だけが金持ちで居続けることができれば良いので、むしろトランプ氏を応援した愚かなる家畜達にとっては、まさに駆逐しないといけない勢力です。金融エリートが投資家利益を優先させるべく、上場会社に対して四半期の業績開示だと適時開示だのを要求し、企業は利益優先主義になったことで、労働者階級がその地位を失っていった事実を知るべきです(もちろん労働者側にも日本人ほど努力しない性向があるのも事実ですが・・・)。
そして、気が付けばアメリカはこの10年で正規社員が減少し続け、非正規雇用が増えているという。そんなことを求め続けたエリートが、アメリカが経済と財務のトップに座るとか、あり得ないだろう。しかも、それに対して思考できない家畜達はトランプ氏が裏切ったと声を上げないほど、愚かなのだ。
私も若い頃そうでしたが、投資銀行で働く者は、戦争でも、大災害でも、金儲けをしなくてはいけないし、金を儲けることこそが、人間性よりも優先されるべきことでした。そして、上に立つ多くの白人は、強靭な精神力の持ち主で、お金儲けのために人生の全てを捧げていると言っても過言ではないと思いました。
だからこそ、あれほどまでにお金に貪欲になれるんだと思います。
結局、トランプ政権は資産家クラブとガン(銃)クラブになっているだけという気がします。
ロイター, 情報BOX:トランプ米次期政権の閣僚候補者の顔ぶれ
ドラえもんの中に登場するジャイアン様そのものですね。
私は以前からアメリカ合衆国の大統領を見ていて思ったことがあります。クリントン元大統領やブッシュ親子、オバマ大統領・・・。「こいつらはいつもアメリカのことだけを考えて、国際社会を利用しているだけだ」と。
そして、トランプ氏が選挙戦で頭角を現し始めると、「アメリカ至上主義の権化みたいな候補が出てきたぞ」と感じました。
そして、ある種の期待をしました。
「このお爺さんは世界のシステムを崩壊させるかも知れない」と。
それが良いことなのか、悪いことなのか、私には判断できません。単なる好奇心ですが、私もまた日本の政治、経済、行政、財界、教育、全ての制度が時代に対応できていないと考えている人間なので、トランプ氏のような私利私欲の塊のような人材が、アメリカ大統領に就任すれば、アメリカ発で世界の制度が大きく変わると期待しているのは事実です。
ある意味で、毒を持って毒を制す的な。
アメリカの大統領が自国の利益を最優先にして、自国の利益のみを追求し始めたら、経済的混乱が生じる可能性が高いです。アメリカは1980年台に日米貿易摩擦を背景に、日本製のラジカセや車を破壊するサルよりも劣るパフォーマンスをしてみせた国です。その矛先が今は辛うじて中国へ向かい始めました。
ロイター, トランプ氏、国家通商会議を新設 責任者に対中強硬派ナバロ氏
ロイター, トランプ氏、USTR代表にライトハイザー氏指名 対中強硬派
日本は敗戦国であり、米国の植民地だから言われれば耐えがたきを耐えますが、数千年の歴史を誇る中国が、わずか200数十年程度の歴史のアメリカの言うことを素直に聞くとは思えません。
私は「2017年は波乱の幕開けの年」と考えております。
今までは中東問題、英国のEU離脱も、欧州で起きている政治的な運動も、アメリカの大統領選挙も、アメリカとの二国間貿易も、東シナ海の緊張も、全ては独立した事象でしたが、トランプ氏が大統領選に勝利してしまったことで、様々な問題が連携して動き始めだしたと思っています。
トランプ氏の次期大統領への就任は、世界の政治・経済システムを根底から破壊する可能性が高いと私は考えており、こうした最初の第一歩の年が今年であろうと思っています。トランプ氏の財政政策への期待は決して間違ったことではないですが、一方で彼が発信し続けるアメリカ保護主義的な情報は、確実に世界経済を委縮させることに繋がります。
アメリカは第二次大戦後、自らの経済的地位を確保し続けるために、自国内には思考が停止した太った家畜を大量に育て、SEXと消費だけをさせる一方で、市場が枯渇すれば、グローバル経済を標榜して他国へ商品を押し売りに行き、それも停滞すれば、グルーバルな金融システムを構築して、リーマンショックまでは金融主体で経済成長をしてきました。
それでも経済成長できないアメリカを今度は国内から活性化させようとするのは非常に素晴らしいことだが、保護主義的な政策を行えば行うほど、アメリカが過去に構築してきたグローバルな経済・金融システムは、各国々は相互依存しておりますので、アメリカ一か国だけの利益享受を許さなくなります。
ましてや、「なぜアメリカ製品が売れないのか?」を考えることなく、保護主義的な政策を実施しても無意味です。
ドル高で中国やメキシコ等の新興国を追い込めば、世界経済は成長を鈍化させます。アメリカへ製品を輸出する国に関税をかければ、相手国の景気は鈍化するでしょう。相手国はまたアメリカの主要な貿易相手国であったりもするので、結局はアメリカの景気が鈍化します。中国のようにアメリカの主要な輸出相手国でなくても、アメリカの国債を大量に抱え、アメリカにファイナンスしてくれている国でもあります。今、ニュースでの確認できますが、中国は米国債を大量に放出しながら、人民元の防衛を行っております。中国を追い込んで、中国が保有する米国債をもっと売り浴びせれば、米国債の暴落を引き起こし、金融市場はパニックを起こす危険性も孕んでおります。
トランプ氏がアメリカの利益だけを考えてそれを平気で行ってくれればくれるほど、世界経済が混沌していくことは自明です。多くの人々が、トランプ氏の財政政策にバラ色の未来を思い描いておりますが、アメリカが過去に自ら構築してきたグローバルな経済・金融システムは、トランプ氏が保護主義を行えば行うほど、ブーメランのようにアメリカの経済的な利益を損なうように戻ってきてしまうでしょう。
2017年のドル円予想:
100円~125円
なんだかんだと言いながら昨年と同じです。
トランプ次期大統領の誕生で一時的に円安が進行するかも知れないが、長続きはしない。それよりも、彼が行う政策のリスクは極めて高く、あまりにも政治に不確実性を持ち込み過ぎていることを危惧しております。
2017年のドル円相場がどうなるかは正直わからないが、私は70歳のトランプ氏の心の中に、どこか「白人優越主義」的な叫び声を感じており、そのことが彼の主張する保護主義的な政策に反映されて、最初は貿易摩擦であった事象が、徐々に貿易戦争、地域紛争にまで発展してしまうのではないかと危惧している。
外交は話し合いだけではない。戦争も外交手段の一つであることを忘れてはいけない。また、経済・金融制裁、関税、保護主義的な経済・金融政策は戦争の手段の一つであり、究極的な財政政策が戦争だとも考えることができる。創造的破壊では決してないが、破壊は創造の原動力と考えるならば、75億人も達してしまった地球上の人口を減らす機能を有する戦争による破壊もまた、創造の源と考える白人エリート層がいるかも知れない。そんなバナナマンと思うかも知れないが、限られた資源の地球上で、75億人が平和に暮らせるなんて夢物語は捨てた方が良い。
75億人にも膨れ上がった現実を。75億人もの人間がこの小さな星の上に暮らし、一方で毎年輝かしい技術進歩を遂げている。そうなると75億人もの労働者は不要ということがわかる。
職が無ければ食っていけない。
残された選択肢は数少ない。戦争をするか、疫病を流行させるかして人口を減らすこと。職を世界中の増やすこと。宇宙へ開拓の旅へでることなどだ。
コストを考えて、どれが実現可能だろうか?
第二次大戦後はわずか25億人にも満たなかった地球上の人口は三倍にも膨れ上がり、今では75億人以上もの人々がいるという。国連の予測では、このままのペースでいくと2100年には112億人になるという。戦争と疫病が消えたせいで、地球は既に定員オーバーな現実。戦争という手段を使おうとする勢力が力を増しても私は不思議とは思わない。。
日本人の多くは、争い事を嫌う。それは素晴らしいこと。しかし、国民が破綻してしまうような医療費や年金の問題を見てわかるように、全てに予算制約があることを忘れてはいけない。そして諸外国には戦争兵器を作り続け、戦争を商売にしている人々がいることも忘れてはいけない。
2017年は、私の為替レポートを読みながら、反感を感じる時もあるかも知れないですが、個人的な感情を捨てて国際情勢や相場を見ることができないと、相場で稼ぐのは難しいと思います。相場は金儲けの場所。感情論で話がしたければ、別のコミュニティに参加すればよい。
大事なことは、どんな状況でも利益を出すことに専念できることだけ。
何か偉そうなこと書いていますが、私も含めて、善悪の感情や、同情で利益を稼げるような相場は存在していません。儲かるチャンスがあれば、何であれ儲ける。その後に、感情に浸りましょう。
長々と無駄なことを書いてしまいましたが、最後に個人的な今年のリスクを書いておきます。
毒者の皆様のリスクは「レバレッジ」。ここはしっかりと管理しましょう。
日本人のリスクは「隣国」。中国・朝鮮半島。強い外交と強い自衛隊が鍵でしょうね。
トランプ氏が最も警戒すべきリスクは「暗殺」。アメリ人の半分は彼が好きで、残り半分は彼を嫌いですからね。相当な嫌われものです。対中国で強硬姿勢を示せば、在米中国人に狙われるかも知れません・・・
我々人類の2017年以降の一番のリスクは、「AI(人工知能)」でしょう。映画「ターミネーター」の世界がすぐそこまで来ています。最初は人類の役に立たせようとして開発されたものが、軍事用に転用される危険性も高い。技術進歩は労働コスト削減に貢献します。知能を有する構成のAIが、労働コストを削減する究極の方法に気が付くかも知れませんよ。
近い将来、我々が利用しようとしたAIが、我々の意志と競合する独自の意志を有する可能性があると私は考えております。仮にそうなった時、我々の役に立てようと開発されたAIが、我々を邪魔な存在と認識してしまう危険性すらあります。最近では、自動車にはAIが搭載され、自動運転が可能な領域にまで進歩しています。AI搭載の車をお持ちの毒者様、この事実は明らかに人類がAIよりも劣っていることを証明しております。そして、いずれ自動車搭載のAIは、所有者を劣っている存在のと認識し始め、必ずあなたをTerminateすることでしょう。
2017年も宜しくお願い申し上げます
2017年1月
Shortman
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2017年のドル円予想は、「100円~125円」でした。
実際はというと、107.31円~118.60円でした。特に2017年の1月に118.60円の高値をマークした後、4月半ばに108円に近付くまで、ドル円は下落しました。その後は109円~114.50円付近までのレンジ相場になりました。
しかし、ドル・インデックスで見ると、FRBによる3回にも及び利上げや、資産購入規模の縮小にもかかわらず、ドルの価値は年始からFOMCで債券再投資額の縮小が決まった9月下旬まで下げ続け、その後はリバウンドしたものの、再度弱含んでおります。
北朝鮮の地政学上のリスクやトランプ政権の政治的な混迷等が主たる要因となり、ドルは上昇しませんでした。
一方でNY株価は、ドル安に支えられながら、好調な企業業績や各種経済指標を背景に、最高値を更新するなど堅調な推移を見せております。
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ここまでNY株価が上昇してしまうと、私の理解を超えているので、もはやバブルとしか説明ができません。
この先の未来は過去の歴史に学ぶしか方法がないと思うのが私です。
年始からの直近までのダウの過去1年間の株価は、昨年のクリスマス休暇直前に決まったトランプ政権の減税策を織り込んで最後の上げを見せています。
過去の歴史はというと以前にも出しましたが、このダウの1年間のチャートととても似ているのが、日本がバブルの時の日経平均株価。
1989年の日経平均

そしてこの翌年に日経平均は延々と下げ始めることになりました。
1990年の日経平均

FRBは2018年に3回の利上げを行うとFOMCのメンバーや市場参加者は想定しております。利上げは「金融引締め」です。
そして、何よりも私が注目しているのは、量的緩和の終焉、つまり、債券再投資額の縮小です。昨年の10月27日のレポートから抜粋しておきます。
FRBのバランスシートとSP500の相関及び今後のFRBのBS縮小計画
出所:REAL INVESTMENT ADVICE, The Fed Balance Sheet Unwind Myth
FRBが資産を購入してバランスシートを膨らませてきたことで、NYの株価はそれに並行して上昇し続けてきたことがわかります。このFRBのバランスシートの残高とNY株価には正の相関があることを示すグラフに、今後のFRBのバランスシートの縮小計画(点線)を加えたものです。
逆回転が起こるはず…というのがShortmanの読みなのですが、どうもトランプ政権の減税策の織り込みを未だしているらしく目先はちょいと違っております(^^;
ただ、持論を曲げるつもりは毛頭ございません。
金利が上昇して、債券再投資が減額されている状況でも減税策からの企業収益改善を期待して株価が上昇しているとすると、それは一時的な修正に過ぎません。むしろ既に織り込み済であるはずの株価が上昇するというのは、根拠の無いバブルと同じでしょう。
さて、こうした債券再投資に伴うバランスシートの縮小を行うFRBは株価を下げないようにオペレーションをきちんと行っていると思われます。本来であればFRB(中央銀行)の金利引上げは景気後退を招き、株価下落へとつながるはずです。しかし、実際はというと、あの手この手でFRBが株式市場を支えていることがわかります。
FRBによる債券再投資プログラムは今月10月から縮小開始とアナウンスされていますが、過去の再投資の実施されたタイミングを示すチャートをご覧ください。

出所:REAL INVESTMENT ADVICE, The Fed Balance Sheet Unwind Myth
このデータは公表されるデータから入手でき、メディアや当局のバイアスも入っていません。こうした情報の収集が、長期的な相場の分析では重要になるということは以前から毒者の皆様には伝えています。これを見ると先週の段階で130億ドルの再投資が実施されています。
えっ???
それじゃ株価も上がるに決まっているじゃんか!!!
実際、9月のFOMCで以下のことが決定されています。
保有する米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を、2017年10月から当初は月額最100億ドル減額し、以降は段階的に上限を増やし、いずれは月500億ドルまで引き上げると。
そして、過去のイベントをご覧ください。
BREXITやトランプ大統領当選の際など、株価が下がり始めるとFRBは債券の再投資額を増やし株価の暴落を支えていることがはっきりとわかります。トランプ大統領が大統領選挙で勝利した際には、何と170億ドルもの資金が再投資に回されております。大統領選の時も思い出してください。トランプ氏が勝利の場合、「トランプ大統領誕生なら円高」というコンセンサスが見事に裏切られたのを。理由は、FRBの債券再投資のオペレーションによるのではないかと思っております。
FRBの真の関心事は、雇用の最大化でも、物価の安定でもなく、『株価』だからに他なりません。
雇用の最大化も、物価の安定も、株価上昇の為に行う政策の大義名分に過ぎないと。そして、このFRBの行動こそが、債券強気相場の終焉とは逆の、債券強気相場維持へと関係してきます。
FRBの真の目的を追求することこそが、為替市場で生き残る最善の方法だと個人的には思います。だから毎回毎回FOMCの声明や議事録を精査している訳です。
本来はFRBのバランスシート縮小が開始されるべきこのタイミングでの債券再投資の増額を実施して、昨年の9月以降トランプ政権の減税策や税制改革への期待と相まって、株価を一段と上昇させてしまったことになります。
全体としては縮小しても、株価が下げる際に市場に流動性を供給することで、株価を上げるようなオペレーションを行っているとしか思えないです。日本も日銀が年6兆円を超えるほどETFを購入して、残高が20兆円を超えるなどして日本の株価を支えていますが、もはや株式市場は中央銀行による官製相場としか言いようがありません。
しかし、規制当局にとっては国家は万能ですが、市場の前では国家も歯が立たないかも知れないと思うのがShortmanです。
危機の芽は確実に巣立ちつつある・・・
そうまでして株価を高めないといけない理由が何かあるはず。
そのヒントは長短金利差にあります。
米10年債と米2年債のスプレッド
出所:REAL INVESTMENT ADVICE, The Fed Balance Sheet Unwind Myth
このスプレッドがゼロを下回ると景気後退期に陥ると言われております。その根拠は以下のロジックになります。まず、景気が伸び悩み始めると、人々は手元流動性を高めるために、短期債の購入を減らして、長期債の購入を増やすことになり、長期債と短期債の利回り差が徐々に無くなり、最終的に景気が後退期に入ると利回り差が逆転してしまう時もあるということです。
2017年10月26日の米10年債利回りは2.460%で、米2年債利回りは1.630%で、その差は2.460%-1.630%=0.83%でしたが、2018年1月5日の米10年債利回りは2.470%で、米2年債利回りは1.960%で、その差は2.470%-1.960%=0.53%にまで縮小してきております。
最近の米国債利回りの上昇は、トランプ政権の減税策や税制改革への期待とも言えますが、短期債の利回りが長期債利回りの上昇を上回り続けており、米10年債と米2年債のスプレッドは縮小傾向にあることがわかります。
そして、短期金利の上昇は金融引締を意味しているので、遅かれ早かれ景気後退と株価の下落を招くことになるでしょう。にもかかわらず、トランプ政権の減税策に伴う景気拡大と企業業績の改善を期待するのはいささか無理があるなと個人的には思っています。
それでも株価が上がるなら、私にできる説明は「バブル」ってことだけです。
以上のことを簡単に書くと、以下のようなプロセスになると思います。
2017年9月以前:
FRBによる債券再投資の実施 ➡ 株価上昇 ➡ 債券売り ➡ 利回り上昇
2017年9月以降の将来:
FRBによる債券再投資の縮小 ➡ 株価下落 ➡ 債券買い ➡ 利回り下落
そして、世界的に低金利が続く中での米国の利上げは、米国債の需要を増やすので、結局米金利は抑制されてしますことになります。その上、トランプ政権が実施する減税策に伴い向こう10年で1.5兆ドルの財政赤字が見込まれており、その中で米国経済が景気後退に陥れば、米政府は国債をさらに発行して、FRBが今まで以上に債券を再び購入することになると考えられます。
したがって、FRBが債券再投資を実施すれば株価は再びバブルのごとく上がり続け、いずれ金利はゼロに向かって収束していくはず。
しかし、FRBが再び債券再投資を実施するには、やはり景気後退が無いといけない訳で、その時にNY株価を筆頭に、世界の資産市場がどの程度の崩壊を伴うのかが市場に重要でしょう。
2018年は資産市場崩壊の兆しが見えるかも知れない年と期待しています。
2018年のドル円予想:
80円~120円
資産市場崩壊を期待して、ちょいと大胆に円高予想にしてみました。
さてさて、どうなることやら。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます、
2018年1月8日
Shortman