おはようございます。
Shortmanです。
今週15日・16日でFOMCが開催される。
まだインフレ目標に執着するのであろうか?
前日銀総裁の白川氏の意見は参考になる。
エコノミスト, 白川前日銀総裁ロングインタビュー「中央銀行は、長い目で見て経済のインフラを作る“黒衣”」
『── 現在の金融政策の理論的バックボーンとなっている主流派マクロ経済学はどこが問題か。
白川 例えば、現実の検証に堪えられる物価上昇率に関する理論がないことだ。主流派マクロ経済学の論理構造は「人々は中央銀行が設定する目標インフレ率に従って予想し、行動する。従って目標インフレ率は実現する」というものだ。各国中央銀行が目標インフレ率を掲げて過去10年、20年とこれだけ中央銀行通貨を供給しているにもかかわらず、低インフレが続いている現象をどう解釈すべきだろうか。理論が現実に合っていないと考えるのが自然ではないか。
より根本的な問題は、経済の持続性をおびやかす不均衡は物価に表れるという経済観だ。主流派の政策思想の基には、80年代以降のインフレ抑制の努力が物価安定をもたらし、それがマクロ経済の安定をもたらしたという成功体験がある。
その結果として、インフレーション・ターゲティング(インフレ目標政策)の考えが生まれた。物価安定を実現するために、中央銀行に独立性を与えるとともに、アカウンタビリティー(説明責任)を求める仕組みだ。経済の不均衡がすべて物価に表れるなら、実に便利な枠組みであり、ある時期まではうまく機能した。
── 物価だけを見ていては、金融政策を誤るということか。
白川 日本のバブルは低インフレの下で生じた。最近、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が「過去2回の景気後退に至る過程では、経済の不安定につながる過剰はインフレではなく、主に金融市場に表れた」と述べているが、まさにその通りだ。
物価については、国内物価上昇率は国内の需給ギャップで決まるという伝統的な見方と、世界全体の需給ギャップで世界全体の物価が決まり、それが国内の物価に反映されるという二つの見方があるが、徐々に後者が当てはまる世界に近づいている。国内の需給ギャップに影響する「金融環境」も自国の中央銀行の金融政策だけでなく、各国の金融政策の集合的影響によって左右される度合いを強めている。
それに何よりも、物価を計測すること自体、難しくなってきている。デジタル化の進展が著しい経済の中で、財やサービスの「質」を調整した上で、「価格」を測定することがますます難しくなっていく。このような変化は現在のような形でのインフレ目標政策の有用性を徐々に下げるものだ。
── 過去の現実を基に構築された理論が、今の現実にはそぐわなくなってきたということか。
白川 いったん最適な政策の枠組みが出来上がると、人々はその中で最適な行動を考えて動き出す。その結果、経済も変化し、最適な政策の枠組みも徐々に変化する。
供給増をもたらす出来事により物価が下がる一方で、金融政策が物価に過度に焦点を合わせていると低金利予想が広がる。それは、債務の過剰な積み上がりをもたらし、やがて危機を生む一因ともなる。経済は複雑な適合システムだ。
実務家である私に代替的な理論を提示する能力はない。でも、主流派マクロ経済学の教科書に欠落している重要な章を提示することはできると思った。』
米国の金融政策理論ではインフレをどう捉えているのであろうか?
中央銀行がいくらインフレ目標を掲げても、良いも悪いも経済構造に変化が無ければインフレ率は上昇しない。
しかし、経済構造の変化を起こすのは、政治家の仕事であって中央銀行の仕事ではない。
『── 中央銀行が経済に果たす役割とは。
白川 経済の持続的な成長は、人々がどれだけ一生懸命働くか、どれだけ知恵を出しイノベーションが起こるかで決まってくる。中央銀行の役割は、持続的な成長が最も起こりやすい安定的な金融環境、つまり物価の安定と金融システムの安定を実現することだ。その意味では中央銀行は「黒衣」だが、その役割を果たすことに失敗すると、経済の潜在能力は発揮されなくなる。
最近は、金融政策によって景気や物価上昇率を最適値にファインチューニングすることに議論が集まりがちだが、通貨や金融環境というインフラを作るという中央銀行の仕事の重要性が過小評価されているように感じる。』
そう、経済の持続的成長を支えるインフラ作りが中央銀行の仕事のはずだ。
そうだとしてもFOMCの後に関心が湧くのは金利水準とその期間の部分だけだろう。
2020年9月7日週のドル円概況:
週初7日月曜日に106.38円の週間高値をマークした後、NY株の下落につれてドル円も下落、9日水曜日には米中対立を懸念して週間安値となる105.76円まで下落したが、そこで下げ止まって106円台を回復して取引を終えている。わずか62銭の狭いレンジでの取引となったが、その背景にはドルと円が連動して動いていることが原因と考えられる。
2020年9月7日週の予想レンジ:
104.50円~106.80円
2020年9月7日週の実際のドル円:
105.76円~106.38円
2020年9月14日週のドル円予想:
今週は14日には自民党総裁選があるものの、15日・16日にFOMCの開催となるので、それまでは動意は出難いと想定されます。FOMCではコロナ禍の景気後退を支えるために、緩和策が継続されることが確認されると同時に、追加緩和策が出されるかもしれないので、やや円高方向の流れを想定している。
2020年9月14日週の予想レンジ:
105.20円~106.70円
定点観測:
ダウとドル円
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ドル円と米2年債利回り
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ドル・インデックスと米10年債利回り
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VIX
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金価格
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原油価格
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Shortman’s View:
10日にこんな事を書いた。
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FT, SoftBank up $4bn on founder’s aggressive US stock options bet
謎だ。
Bloomberg, ソフバンクG、米ハイテク株オプションを1カ月に「大量」購入-報道
どこを目指しているのか?
ヘッジファンドになりたいのか?
Bloomberg, ソフトバンクG、株式デリバティブで約40億ドルの含み益-報道
儲かれば良いという話ではない。
Bloomberg, ソフトバンクGに株主が情報要求、オプション取引の責任者は誰か-報道
当然こういう話になるわな。
今後の情報を待ちたい。
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こんなコラムがあった。
ロイター, コラム:ソフトバンクG、米ハイテク株投資の中に見える「本性」
『ソフトバンクグループ9984.Tの孫正義会長兼社長はカジノの外でうずうずしているギャンブラーのように、少しでも賭け金があると手を出さずにはいられないらしい。』
ギャンブラー・・・まさにそんな印象を持っていたので、取り上げてみたが、そのソフトバンクは非公開化も検討しているようだ。
FT, SoftBank executives revive talks on taking Japanese group private
上場を止めれば外圧は減り経営の自由度は増す。
さぁ、どうするのかな?
Good Duck!
Shortman